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2006年5月27日 (土)

奥村晃作 スキーは板に乗ってるだけで(2)

コメントもらって元気100倍(アンパンマン?)、奥村晃作(依然として敬称略にて
失礼いたします)の短歌読み込み、第2弾です。
同じく歌集「スキーは板に乗ってるだけで」から、鶏肉レンジ料理の歌を。

   皮の付く鶏胸肉(とりむねにく)に青ネギを載せてラップしレンジでチンす

乱暴に要約すれば、鶏肉を電子レンジで料理する歌、です。
この歌が理解できない、という人は、鶏肉とネギの煮物料理をレンジで作って食べ
た経験がないだけなんじゃないか、と思います。
・・・すみません。こういう書き方では何もわからないですね。詳しく説明します。

電子レンジで作る鶏肉の煮物って、手軽で、それはそれはおいしいんですよ。
私の手元にある電子レンジ料理の本には「鶏のこっくり煮」として載っていて、
子供が生まれる前、夫婦二人だった頃によく作っていました。
一人暮らしや夫婦だけなど、少人数のご家庭にお勧めの簡単料理です。
この料理の作り方をざっとお教えいたします。

【鶏のこっくり煮】
1.鶏肉(ムネでもモモでも、必ず皮付き)とネギをぶつ切りにする。
2.酒とみりんと醤油(1:1:1)と鶏肉を耐熱容器(ガラスがベストですが、
 陶器、レンジ可のプラスチックでもOK)に入れて混ぜ、ラップでぴっちり蓋を
 し、レンジで3分間調理する。
3.鶏肉を混ぜ、ネギを載せて再びラップし、3分間レンジで調理する。

これでできあがり。
(3分というのは鶏モモ肉1枚の場合です。時間は適宜、調整して下さい。)
レンジの扉を開くと、ラップをとる前から醤油と鶏肉の良い香りが漂ってきます。
熱いので気をつけて下さいね・・・って、いつの間にか料理ブログになってる?(笑)

とにかく、ネギの甘みと鶏皮の油分がほどよく混じって、おいしい料理なんですよ。
レンジを利用してできる、スピード料理の代表格じゃないかと思います。
上に書いたように、とにかく簡単な料理です。簡単すぎるくらい。
なのに美味。こんなに手軽で、こんなにおいしくていいのか!?みたいな。

鶏肉レンジ料理のおいしさについて、簡単ですが、ご理解いただけたでしょうか。
さてここで、最初にあげた短歌をもう一度、読んでみましょう。
しつこいですが、目で読んで意味をとるだけじゃなく、ささやき声でもいいから、
音をちゃんと感じて読んで下さいね。

   皮の付く鶏胸肉(とりむねにく)に青ネギを載せてラップしレンジでチンす

鶏肉レンジ料理の反則的な手軽さ、が見事に表現されているように思えません?
特に青ネギから後、カタカナ語の連続した軽快なリズムが現代風。
流行のラップ(音楽の方です、ヒップホップともいいます)にのせて踊れそうな
くらい・・・って私はそんな踊りはしませんが、それくらいリズム感がありますよね。
このリズム感(軽さ?)もある意味、反則的なのかも。

更にこの料理を作ったことがある人、味を知っている人にとっては、この短歌の
余韻として、容器の熱さ、蒸気と共に漂ってくる香り、などがたちどころに思い
出されて、あー、おいしそう!食べたい!となるんですよ~。
この余韻を味わってみたい方は上のレシピを基にぜひ、作ってみてくださいね。
作って食べてみることで、この短歌の味わいは確実に深くなります。

電子レンジを使えば、短時間で軽々とおいしい料理を作ることができてしまう。
この手軽さを批判するのではなく、無視するのでもなく、ただ、ありのままに描写する。
良かれ悪しかれ、私たちはこういう時代、こういう環境の中に生活している、と。
今の時代ならではの生活詠、だと思います。

・・・一連の鶏肉レンジ料理の歌を、続けて味わってしまいましょう。
歌集の中で次に並んでいるのはこんな歌です。

   鶏肉の臭い消すため青ネギに生姜も載せてレンジで熱す

鶏肉レンジ料理、試行錯誤の歌、でしょうか。
作ってみたけれど、どうも、鶏肉の臭みが気になる・・・。
(もしかして私のレシピとは違い酒・醤油・みりん抜きで調理してたとか!?)
生姜を載せて臭みを消したらもっとおいしくなるんじゃないか?と生姜を加えて
鶏肉レンジ料理に再挑戦した、という歌なんだと思います。

簡単な料理でも、人間って欲深なもの、もっとおいしくできるならしたい、と
思いますよね。そこで生姜を載せるという、ささやかな工夫をしてみた。
そう解釈すると、人間の創意工夫精神について、鶏肉レンジ料理を材料に表現
した歌・・・なんて風にも、深読みできてしまう。
でも次の歌は同じ鶏肉レンジ料理でも、また別の料理だと思います。

   五分間レンジで蒸した鶏肉の指もてつまみよく裂けるなり

これは鶏肉レンジ料理といっても、蒸した鶏肉を裂く感動を詠んだ歌、です。
レンジで蒸した鶏肉って、いろんな料理の素材になるんですよ。
サラダや和え物など、味付けによって洋風和風中華風どれも可能です。
レンジ蒸し鶏は、鍋に湯を沸かしてゆでるよりも、旨みや栄養分が鶏肉の中に
残りますし、蒸し器を出して蒸気をたてて、などという、おおごとをしなくて
済む手軽さも現代家庭向けです。

そして、手で裂きやすい。
包丁なんていりません。肉の繊維に沿って、おもしろいぐらいに裂けます。
・・・ここまでが、この短歌の理解に必要な予備知識。

この「おもしろいぐらい裂ける」という感動が、奥村晃作によってこの短歌に
凝縮されているのです。
この歌によって表現されているのは、以下のようなことだと思います。

皿に載せた鶏肉に酒をふり、ラップをかけレンジに入れる。
(これは歌には表現されてませんが「蒸した」という所で酒蒸しと勝手に解釈してます。)
レンジの前で待つこと、5分。
扉を開け、ラップをはずし、指で持てる温度になるまで鶏肉を冷ます。
そして、裂く。よく裂ける・・・これはおもしろい。

一つの光景と新鮮な感情が、とてもわかりやすく表現されています。
21世紀の日本のある家庭での、ある時間。
日常的な台所での、なにげない光景。
ありふれた平凡な光景なのかもしれませんが・・・そこには、確実に、
感情を持って生きている人間の存在があります。
これをつまらない、退屈な光景、と思う人もいるのでしょう。
でも、平凡な日常の継続こそが幸福な人生、と思っている私のような一庶民
にとっては、身近で、しかもこの上なく幸福な、ほほえましい光景に思えます。

奥村晃作の歌には、日常の中の感動をストレートに再認識させてくれる力が
あるようです。
「再」認識、と書いたのは、知っているつもりでいた、わかっていたような気が
していても実は忘れていたことを、思い出させてもらったような気分だから、です。

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コメント

詳しいレシピまでお書き頂き有難うございます。
いつか試してみたいと思います。

自分の場合と料理の種類は違いますが、享受は読者の自由であり、嬉しく読ませて頂きました。

投稿: 奥村晃作 | 2006年5月29日 (月) 10時40分

コメントありがとうございました。
やっぱり(笑)違う料理だったんですね。自信たっぷりにレシピを書いてから、もしかしたら全然違う料理だったのかも、と思って・・・でもまぁ、私は読んでコレだと思ったというのを書くんだから(そもそも奥村さんが本当に料理を作ったかどうかも不明なんだし)違ってても別にいいや、と開き直って最後まで書いてしまいました。
奥村さんが心の広い方で良かったです。

投稿: slummy | 2006年5月30日 (火) 20時15分

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