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2006年4月23日 (日)

芭蕉の糸に魅せられて

芭蕉布の工房を見学に行った。

知人の自宅を訪問した、という言い方もできる。
工房の主にはかなり前に会ったこともあり、お互いの職業も配偶者も知っている。
独立し自宅を工房にしている、という話は聞いていたが、訪問したのは初めて。

場所は、大宜味村喜如嘉。風苧(ふう)工房。
古い赤瓦の民家を借りて住んでいるという。
家に入ると、座卓の上に大きな円いカゴ(ザル?)が無造作にのっていた。

その中に、糸が入っていた。
天井から吊るされた白熱灯の光に照らされて、生成りの芭蕉の糸が輝いていた。
絡まらないよう、輪に広げられ、ゆるく重ねられた、芭蕉の糸。
あまりの美しさに息を呑んだ。

許可を得て触らせてもらった。
最初の印象は、その軽さ。
まっすぐに延びる硬さと、曲げれば曲がるしなやかさとなめらかさがある。
糸であって、糸ではないような。
携帯でIto も撮らせてもらったが、色も照りも全然再現できてない。

芭蕉の繊維を割いて結んで一本の糸にする、苧績み(うーうみ)という作業の
途中だったらしい。割く前、太いまま巻かれた糸玉が水に入れてあった。
糸をたどりながら、よく見ていくと小さな小さな結び目がある。
結んでカミソリでギリギリの所で切るそうだ。
「機結び(はたむすび)」というその結び方も、教えてもらった。

工房の主は芭蕉の育成から織りなど全工程を自分でやっているそうだが、
芭蕉布会館にいた頃は他の人に苧績みしてもらった糸を使って織っていたという。
苧績みできる人が少なくなっている、やりませんか?と言われた。

・・・ものすごく心が動いた。
こんな糸、触れるだけでも幸せだ。
指先を水に濡らし、割き、結ぶ作業にはものすごく心惹かれるものがある。

しかし。
こういう大事な工程を、いい加減なことでは引き受けられない。
私には本業もあることだし。どこにそんな時間が作り出せるのか?

ということで、一目ぼれしたもの(芭蕉の糸)に対して、ひとまず冷却期間を
置くことにした。冷めないようだったら、時間を捻出してでもやってみよう。

織り上がった芭蕉布も見せてもらった。
糸ばかりではなく、布も、とても良いものだった。

玉ねぎ染めの茶色で、縞のテーブルセンターがあった。
こんな感じの帯があったらいいなぁ、と言ったら、作れますよ、という返事。
同じ縞模様、もっと太い糸で、単の半幅帯を注文した。
これまでの私の着物生活で最も高い注文品になる(価格はヒミツ)。
でも、ネットでの価格などとは比べものにならない。
それに、作者を知っているという安心感。

出来上がってくるのが楽しみ。
私が持っている中では格段に高価な帯になるけど、普段着に締めよう、と決心
している。よれよれになってすり切れるまで着用できたらいいなぁ。

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