2008年10月 8日 (水)

妊産婦死亡した方のご家族を支える募金活動

「周産期医療の崩壊をくいとめる会」によって、妊産婦死亡した方のご家族を支える募金活動が行われています。
活動をしている、代表のインタビューはこちらです。

このブログでも何度か書いてきましたが、お産は今でも命がけ、です。
日本で妊産婦さんが死亡する率は世界的に見ても低いのですが、それでもゼロにはできません。毎年、数十人程度の方が亡くなられているのが現実です。
お母さんが亡くなり、赤ちゃんだけが生き残ることも、もちろんあります。

残されたご家族は、どうしてらっしゃるのでしょう。
お母さんを失った赤ちゃんを大切に育てようとしている、ご家族を支援したいと思いませんか。

無事にお産が済んだ、という女性。

身近に「母子とも無事」なお産があった方。

その幸せを、不幸にして亡くなられた妊産婦さんのご家族に分けてくださいませんか。

募金先を、もう一度リンクしておきます。
こちらです。

追記:ロハス・メディカルさんがクリック募金をはじめました。
自分でわざわざ口座振込するのは、という方には、こちらをお勧めします
あなたのクリックが、募金になります。

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2008年2月26日 (火)

一般向け:子供に語る、福島大野病院事件

前エントリの「子供に語る、福島大野病院事件」ちょびっと反響があったので、細部を修正した「一般向け」を出します。
といっても「一般(の大人)向け」というわけではなく、一般の子供向け、です。
自分の子供のために話した部分を、修正してあります。
一般的な小学生なら理解できるような文章にしたつもりです。

(2008年10月8日 追記)公判終了という結果を受けて少し書き換えました。

子供さん、また、お子さんたち以外が対象でも、福島大野病院事件の概要説明に使っていただけるのなら、本日のエントリは転載可です。

   ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

あるところにね、お腹の大きいお母さんがいたの。
そのお母さんには一人、もう子供がいてね、二人目の子がお腹の中に入ってたの。
一人目の子供はね、お母さんのお腹を切って、お医者さんにとりあげてもらったんだって。

で、そのお母さんはね、次の子を産む時も、同じようにお腹を切って、赤ちゃんをとりあげてもらったの。赤ちゃんは元気に産まれてきて、良かった!おめでとう!ってなったんだけど、そのあと、お母さんのお腹から血が出て、止まらなくなっちゃったの。シャワーみたいにすごい勢いで血が吹き出して、大変なことになったんだって。
それで、なかなか血が止まらなくて、とうとう、そのお母さんは死んでしまったの。

そしたら、そのお腹を切ったお医者さんは警察に逮捕されたんだよ。
そのお母さんが死んだのは、そのお医者さんのせいだ、お医者さんがそのお母さんを殺した、って。

そのお医者さんはね、頑張って血を止めようとしたんだって。
でも、止まらなかった。止められなかった。
そういう時に血を止めるにはね「子宮」っていう、赤ちゃんが入ってた袋を全部、取ってしまうのが一番いいんだよ。
だけど、そのお医者さんは、その前に、そのお母さんと話をしてたんだって。
「あともう一人、子供を産みたいです」ってそのお母さんは言ってたんだって。
お腹を切ったお医者さんは、そのことをおぼえてたんだって。

そのお母さんはね、3人の子供が欲しかったんだろうね。
3人子供がいる、5人家族になりたかったんだろうね。
でも、子宮を取っちゃったら、もう子供を産めなくなっちゃう。

赤ちゃんをとりあげたあと、お腹から血が止まらなくなったとき、すぐに子宮を取れば、血が止まる、っていうのは本当のことだよ。
でも子宮を取ったら、3人目はもう絶対、産めない。
だからお医者さんはギリギリまで子宮を取らないで、なんとか血を止めようと頑張ったんだって。
でも、血がどんどん出てくるのを止められなくて、とうとう最後には子宮を取ったんだけど、遅すぎて、そのお母さんは死んじゃった。

警察は、もっと早く子宮を取ってればそのお母さんを助けられたのに、子宮をなかなか取らなかったお医者さんが悪い、って言って、お医者さんを逮捕して牢屋に入れたんだよ。
警察はね、別のお医者さんに聞いたんだって。
「こんなことがありました。どうしたら、このお母さんを助けられたと思いますか」って。
きかれたお医者さんは「もっと早く子宮を取っていれば、助けられたと思います」って答えて、紙にもそう書いて、警察にあげたんだって。
でもね。
その、別のお医者さんは、そのお母さんとお話、してないからね。
そのお母さんが「もう一人、赤ちゃんを産みたいです」って言ってたの、知らなかったのかも。
警察はその紙をもらって、そのお母さんが死んだのは早く子宮をとらなかったお医者さんのせいだ、って逮捕しちゃった。
だけど、そのお母さんが死んだのは、ぜんぶお医者さんのせいだ、っていうのは、まちがってる。
どんなお医者さんでも、ぜんぶの人を助けられるとは限らない。
悲しいことだけど、お医者さんがどんなに頑張っても、助けられない命が、あるんだよ。

今、日本中で、赤ちゃんをとりあげるお医者さんが少なくなってきてるの。
お腹の大きいお母さんから、赤ちゃんをとりあげる時に、大変なことはいっぱいあって、みんながみんな、無事に産まれるとは限らないし、産んだあとも無事とは限らないの。
でも、それは、全部、お医者さんのせいだってわけじゃないんだよ。
お医者さんが一生懸命に頑張っても、助けられないこともあるんだよ。
お母さんか赤ちゃんかが死んだ時に、そのとりあげたお医者さんが逮捕されて牢屋に入れられちゃうんだったら、赤ちゃんをとりあげるお医者さんがもうとりあげるのをやめたり、赤ちゃんをとりあげるお医者さんになる人が、いなくなったりするんだよ。
でもそれで困るのは次に「赤ちゃんを産みたい」っていう人なのにね。
お医者さんが、わざと殺したんじゃないんだから、逮捕して牢屋になんか入れないで欲しいよ。お医者さんを牢屋に入れても、なんのためにもならない。
赤ちゃんをとりあげる仕事って大事で、それをするお医者さんがいないのって、とっても困るのにね。

お医者さんが牢屋に入れられたあと、裁判っていう、両方の話を聞いてどっちが正しいっていうのがあったんだ。
それで結局「お医者さんは頑張ったけど、そのお母さんを助けられなかった。そのお母さんが死んだのはお医者さんのせいではなかった」ということになって、逮捕されたお医者さんは、牢屋から出られたんだよ。

それは、正しいことで、良かったんだけど。

死んじゃったお母さん、かわいそうだね。
生まれたばかりの赤ちゃんと、もう一人の子供を残して、死にたくなかっただろうね。
お母さんが死んじゃって、子供たちも、お父さんも、かわいそう。

こんな悲しいことがまた起きないようにするには、どうしたらいいのかな。
簡単に答えが出ることじゃない、けどね。

   ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

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2008年2月25日 (月)

子供に語る、福島大野病院事件

ウチの娘、ララ(仮称)は8歳、小2です。
最近、大人の話に耳を澄ませ、口をはさんでくることが増えてきました。
身内との食事の席で「産婦人科のお医者さんが逮捕された事件があって」という話をしていたら、ララが「何?何?」と興味津々で割って入ってきて。

で、なりゆきで、ララに福島大野病院事件の説明をしてしまいました。
かなりデフォルメ入ってるけど、再現してみます。

   ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

あるところにね、お腹の大きいお母さんがいたの。
一人目の子供はね、ララのお母さんがララを産んだ時と同じように、お腹を切って、ララをお医者さんにとりあげてもらったのと同じように、お腹からとりあげてもらったの。

で、そのお母さんはね、次の子を産む時も、同じようにお腹を切って、赤ちゃんをとりあげてもらったの。赤ちゃんは元気に産まれてきて、良かった!おめでとう!ってなったんだけど、そのあと、お母さんのお腹から血が止まらなくなっちゃの。
で、なかなか血を止めることができなくて、とうとう、そのお母さんは死んでしまったの。

そしたら、そのお腹を切ったお医者さんは警察に逮捕されたんだよ。
そのお母さんが死んだのは、そのお医者さんのせいだ、お医者さんがそのお母さんを殺した、って。

そのお医者さんはね、頑張って血を止めようとしたんだよ。
でも、止まらなかった。止められなかった。
そういう時に血を止めるにはね「子宮」っていう赤ちゃんが入ってた袋を全部、取ってしまうのが一番いいんだよ。
だけど、そのお医者さんは、その前に、そのお母さんと話をしてたんだって。
「もう一人子供を産みたいです」ってそのお母さんは言ってたんだって。
お医者さんはそのことをおぼえてたんだって。

そのお母さんはね、3人の子供が欲しかったんだろうね。
ララにもリリとルル(妹と弟)がいるように、三人子供がいる、五人家族になりたかったんだろうね。でも、子宮を取っちゃったら、もう子供を産めなくなっちゃうからね。

お腹から血が止まらなくなったとき、すぐに子宮を取れば、血が止まる。
でも子宮を取ったら、三人目はもう絶対、産めない。
だからお医者さんは子宮を取らないで、なんとか血を止めようとしたんだけど、止められなくて、とうとう最後には子宮を取ったんだけど、遅すぎて、そのお母さんは死んじゃった。

警察は、もっと早く子宮を取ってればそのお母さんを助けられたのに、子宮をなかなか取らなかったお医者さんが悪い、って言って、お医者さんを逮捕して牢屋に入れたんだよ。
警察はね、別のお医者さんに聞いたんだって。
「こんな事件がありました。どうしたら、このお母さんを助けられたと思いますか」って。
きかれたお医者さんは「もっと早く子宮を取ってれば、助けられたと思います」って答えて、紙にもそう書いて、警察にあげたんだって。
でもね・・・その、別のお医者さんは、そのお母さんとお話してないからね。
そのお母さんが「もう一人、赤ちゃんを産みたいです」って言ってたの、知らなかったのかも。
だけど、警察はその紙をもらって、そのお母さんが死んだのは早く子宮をとらなかったお医者さんが悪いんだ、って逮捕しちゃった。

それで、日本中で、赤ちゃんをとりあげるお医者さんが少なくなってきてるんだよ。お腹の大きいお母さんから、赤ちゃんをとりあげる時に、大変なことはいっぱいあって、みんながみんな、無事に産まれるとは限らないし、産んだあとも無事とは限らないの。だから、お母さんか赤ちゃんかが死んだ時に、そのとりあげたお医者さんが逮捕されて牢屋に入れられちゃうんだったら、お医者さんが赤ちゃんをとりあげるのやめたり、赤ちゃんをとりあげるお医者さんになる人がいなくなったりするんだよ。

ララをとりあげてくれたお医者さん二人のうち、一人しかもう赤ちゃんをとりあげる仕事をしてないよ。リリとルルをとりあげてくれたお医者さん二人は、どっちもやめちゃった。赤ちゃんをとりあげるようなお仕事をするお医者さんは、どんどん減ってるの。でもそれで困るのは、次に赤ちゃんを産みたい、っていう人なのにね。逮捕して牢屋になんか入れないで欲しいよ。
赤ちゃんをとりあげる仕事って大事で、それをするお医者さんがいないのって、困るんだけどね。

   ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

うーん。
うまく語りきれてないような気もするんですが、少なくともララは真剣な眼差しで聞いていました。

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2008年2月18日 (月)

2月18日です

「福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します」

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この事件で亡くなられた方に哀悼の意を表します。
残されてしまったご家族のことも、忘れることはできません。

それでも、なお。
戦うべき相手が間違っている、と思わずにいられないのです。
この事件は、診療にあたった産婦人科医師個人の責任に帰すには、医学的事実からして、あんまりな内容です。
与えられた環境の中で最善を尽くした医師を、結果が悪かったからといって断罪されては、今後、私たち医師は最善を尽くす医療ができません。

2月18日は、2年前、この産婦人科医が不当にも逮捕された日です。
その日以降、逮捕されないための「防衛医療」「萎縮医療」は医療関係者の間に急速な広がりを見せています。
若い世代ほど、その傾向は強いような印象を持っていますが、私自身の中にもその萌芽を感じずにはいられません。

どういう風にか、と言いますと・・・たとえば。
以前なら純粋に「患者さんのために、慎重にしなきゃ」と考えていたことが
「自分が訴えられないために、慎重にしなくちゃ」となってきています。

どっちみち、慎重なのは良いことでは、と思いますか?
いえ、そうとばかりは言えないのです。
「自分が訴えられないため」の慎重さ、と「患者のため」の慎重さ。
この二つが、本当に、どこまでも同じだと思いますか?

話は少し変わりますが、つい先日のことです。
患者の立場を医学生にも伝える、という講義をしている方から聞いた話です。
大学での講義の際、学生に「どんな医師になりたい?」と尋ねたら

『訴訟で訴えられないような医師になりたい』

という答えが返ってきたそうです。
医学部3年生にして、理想の医師像が「訴えられない医師」。
「患者のために一生懸命、頑張る医師」ではないのです。
若い人ほど、時代の趨勢には敏感です。
「訴えられない医師になりたい」という医学生ばかりの国で、本当にいいのでしょうか。

大野病院事件は、この国の、この時代を象徴するような事件です。
私は、逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ、支援します。

PS:大野病院事件についてご存知ない方のために、リンクしておきます。
「産科医療のこれから」大野病院事件 目次 

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2007年12月 5日 (水)

大野病院事件第10回公判速報より

ロハス・メディカル・ブログからの引用です。

>私は知らなかった。
>胎盤を剥がした後の子宮が
>傷をつけなくても1分間に500cc出血する臓器であるということを。
>おそらく多くの方が同じでないか。
>検察の見立ても、大量に出血したからには傷をつけたに違いない
>というものであっただろう。

>医療者にとっては常識なのかもしれないが
>誰かが最初からそのことを説明してくれていれば
>話がここまでややこしくなることもなかっただろうと思うのである。
>おそらく検察側も
>自分たちの見立てが根本からナンセンスであることに
>間違いなく気づいたと思う。

なんというか・・・ショックでした。
「患者と医師をつなぐ」ロハス・メディカルの川口さんがこの内容を書いている、ということも含めて。

胎盤が剥離した後の子宮が復古不全、収縮不全状態であれば大量の噴出するような出血があって当然、と医師であれば考えます。
少なくとも私は漠然と、ですが、そういう状況を想像していました。
毎分500cc、という具体的な数値は知らないけど、とにかく大量出血、と。

でも今回、池ノ上教授が説明するまで、誰もこのことを、非医師が理解できる言葉で、説明していなかった。何人もの医師が証言していたのに。

シャワーヘッドがオープンになったような(出血)、というのはすぐれた比喩です。
池ノ上教授はもちろん経験も豊富で、その上に準備に準備を重ねて、この比喩を採用し、今回の明解な説明を作り上げたのでしょう。

それにしても…この齟齬は、大きいですね。
医療を行う上で、医師の立場では前提となっている「常識」を言語化することの困難さを改めて感じました。こんなことで気後れしていてはダメなんですけど。

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