2019年7月14日 (日)

診療情報管理士は、病院の経営とはどういう形で関わるのか?

ある高校生さんにご質問いただいたので、ブログにてお返事させていただきます。

質問

「診療情報管理士は実際、病院の経営とはどういう形で関われるのでしょうか?」

これは、とても良い質問だと思います。診療情報管理士の役割は大きく変化しつつあります。

1.病院の経営とは何か

まず「病院の経営」とは何であるか、を私の言葉で説明させてくださいね。

「経営」とは、営み(事業)を続けること、そのものです。
病院は、患者さんの病気を治療する、医療を提供する事業体です。
たとえば「沖縄県立中部病院」は、沖縄県(沖縄県庁)の「病院事業局」という組織の一つとして経営されています。

事業を継続して行う、すなわち「経営する」という点で、病院は事業体としての性質を持っている、ということをまず理解してくださいね。

そして、事業体の経営には経営資源が必要です。
病院であれば、患者さんに医療を提供し続けるために、経営資源が必要、ということです。

この経営資源は、一般に4つの要素に分けられています。
1)人的資源(ヒト):医療者、看護者、その他の病院で働く人
2)物的資源(モノ):建物、検査機器などの機械、装置
3)財務的資源(カネ):1)2)を事業目的に沿って維持し続けるのに必要なお金
4)情報資源(情報):1)2)3)を事業目的に沿って維持し続けるのに必要な情報

ヒト・モノ・カネ・情報という4要素、おぼえてくださいね。

病院で、この4つの全体をまとめて管理するのは病院長、看護部長、事務部長などの、管理職と言われる人たちです。
管理職の下に医療部門(医師、医療技術者)、看護部門(看護師、看護助手など)、事務部門(事務職員)がいます。

ある病院の事務部長さんは診療情報管理士の資格を持っていますが、この資格を持っていない人が事務部長になることも珍しくはありません。しかし病院事務職員として仕事をしていく上で、診療情報管理士資格取得に必要な医療・経営・情報の知識は役にたつこと間違いないです。

病院の事務部門の中で、ヒトを管理するのは人事部門、モノを管理するのは物流・施設部門、カネを管理するのは財務部門、情報を管理するのが情報部門、という風に組織上は分割されます。分割されているといってもたとえば人事部門はモノやカネには一切関わらない、という厳格な仕事の分け方(業務分掌)ではありません。主にヒトに関係することを扱い、ヒトに伴うモノやカネにも関わる、という程度に理解してください。

2.病院の情報を扱う診療情報管理士

さて。
病院のさまざまな情報は「診療(記)録、カルテ」に集まってきます。
以前は紙のカルテが一般的でしたが、現在は電子化されています。

この電子化されたカルテを読んで内容を理解し、必要な情報をとりだし、その情報を必要としている人に相手が求める形で加工して届けるのが、診療情報管理士の仕事だと私は理解しています。

カルテの内容を理解するには医学の知識が必要です。
情報を扱うにはITに関する技術力が必要です。
相手が何の情報を求めているのか理解し、加工して届けるには医学、情報に加えてコミュニケーション能力が必要です。

実例をあげましょう。※そのままという訳にはいきませんので、一部を仮名にするなど変更しています。

名桜大学の診療情報管理専攻の卒業生であるYさんは、病院で医事課入院係という仕事をしています。
電子カルテをものすごく「読む」仕事だそうです。
どんな風に読むのか、読んで何をしているのか、というYさんの物語です。

登場人物は3人。
Aさん:患者さん。病院に入院し、退院直前です。
F先生:医師。Aさんの主治医です。
Yさん:医事課入院係の診療情報管理士です。病院に勤務して3年目。

Aさんが入院して病院で治療を受け、病気が良くなったので入院5日目での退院が決まりました。
退院前日、4日目の午後のことです。
明日は退院する、と決まったAさんのカルテをYさんが見た時、医師の記録の重要な部分が、何も書かれていないことに気づきました。
「退院時病名」欄が空欄なのです。

入院患者さんの医療費は「退院時病名」で決定されます。
なのに、主治医のF先生は他の重症患者を何名も担当し診療に追われ、病状が改善し退院する患者、Aさんのカルテ入力が後回しになっているのです。
医師F先生としては、重症患者の診療が優先です。
ですけれど、Aさんの退院時病名が決まらないと、Aさんの入院診療費は不明のまま。病院は、入院医療費を請求できません。

Yさんは、Aさんの電子カルテを読みました。
病院に入院するきっかけとなった紹介状、入院してから行った検査リスト、放射線診断医の診断結果、F先生が使用した医療器具、看護師の看護記録などなど、膨大な情報を読み、Yさんなりに理解し考えました。
そしてF先生に退院時病名を提案するメールを送りました。

「Aさんは明日退院予定です。退院時病名は〇〇でよいでしょうか?」

翌日の朝一番で、F先生から「Aさんの病名〇〇を承認します」という返信がYさんに届きました。
病名に従ってAさんの入院医療費が決定され、Aさんは病院の窓口で医療費を支払って退院しました。

これは、ほんの一例です。Yさんの上記の例では「情報」から「カネ」の管理に関わり、「ヒト」である医師の業務効率化に貢献した、ということになります。他にも「モノ」や「情報」に直接的に関わる、重要な役割(病院の各種統計やカルテ開示などなど)を各病院の診療情報管理士は担っています。

電子カルテを読み、必要な人に必要な情報を届ける、診療情報管理士の仕事は、他にも多くの場面で病院の経営に関わっています。

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