2011年6月28日 (火)

医師個人の妊娠・産休を新聞記事にすることについて

ssd先生のブログから知った記事です。朝日新聞のWeb版から引用・転載します。

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小児の2次救急 休日と夜間中止

2011年06月25日 朝日新聞 マイタウン三重

 桑名市の小児医療が危機を迎えている。同市で唯一、夜間・休日の小児の2次救急患者を受け入れている山本総合病院の小児科常勤医が2人から1人になり、救急患者や入院患者の受け入れができなくなるためだ。当面は近隣の病院に協力を求めて対応する。

 同病院には7月、三重大学医学部から後任の小児科医が赴任するが、妊娠中のために救急対応ができず、8月中旬から産休に入る予定だという。小児科部長の川崎肇副院長1人では救急や入院の対応は難しいことから、7月から夜間・休日の2次医療の受け入れを中止。8月中旬からは入院の受け入れ も中止する予定だという。

 同病院では2008年7月からの1年間も小児科の常勤医が1人になった。当時は県立総合医療センター(四日市市)に勤務していた三重大学の小児科医が交代で救急態勢を補った。同病院の奥村秀郎事務長は「大変厳しい状況になった。これまでも色々やりくりして小児2次救急を維持してきたが、今回の事態は非常に残念だ」と話す。

 同市では、夜間・休日の1次救急医療は桑名医師会などが運営する応急診療所が担っており、現在、同医師会が近隣の県立総合医療センターや四日市市立四日市病院、海南病院(愛知県弥富市)などに2次救急や入院受け入れの協力を要請している。

 桑名医師会の伊藤勉会長は「話を聞いたときは衝撃的だった。早く市民病院と統合した新病院として、三重大からきちんと医師を派遣してもらえる態勢にするべきだ」と指摘する。当面の運用については「1次救急はこれまで通り応急診療所で受け入れ、2次救急も近隣病院の協力態勢を整えて市民に不安がないように努力する」と話す。

 同医師会は29日に記者会見を開き、今後の対応を説明する予定だ。(姫野直行)

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ssd先生のブログでは

>asahiの記事の文章、推敲が足りません。

というコメントがありましたが、私も同意見です。だって私の目にはこの記事、

「地域の小児救急医療体制は危機を迎えている。既に妊娠中で、赴任直後に産休に入る小児科医が赴任するため。」

と読めてしまうんです。幾分、被害妄想的かもしれませんが。

そもそも、妊娠、産休といった小児科医個人のプライバシーを公にすることについて、記者は小児科医本人の許可を得たのでしょうか。いえ、もし許可を得ていたとしても、こういう文脈で書かれたことを、この医師本人はなんと思うでしょう。「新聞に騒がれずに、静かに出産したかった」と思うのではないでしょうか。

こんな風に新聞の地域欄に書かれた小児科医が、出産後、その地域に定着するとは考えにくいですし、この記事が出たことによって今後、妊娠可能な年代の女性小児科医が喜んで赴任する地域になるとは、ますます考えにくいです。

つまり、今後の地域の小児科医招聘に良い影響を及ぼすとは考えにくい記事、です。

この記事を書いた記者と、この記事の掲載を許可したデスクは、小児科医の3割以上は女性だという事実を知らないのかもしれません。

また、新聞記者の立場では、小児救急制限により不安を感じる親の立場や気持ちは想像できても、妊娠可能な年齢の女性小児科医、将来小児科医となるかもしれない医学生、ごく普通の人間として扱われることを願う多くの医師が、この新聞記事を目にしたらどう思うか、どう感じるか、ということにまでは考えが及ばなかっただけ、なのかもしれません。

でも、地域に医療を提供している私たち医師も、一般市民と同じ、人間なんです。

24時間365日医療のために献身するヒーローやヒロインだと自分のことを考えている医師も、いるかもしれません(・・・私は違います)。でもそういう医師だって、アンドロイドやロボットではありません。眠りもすれば食事もする、ごく普通の人間です。

むしろ、地域の人たちの健康を守りたい、と頑張っている臨床医の多くは、ヒーローやヒロインのように報道されたり扱われたりすることを嫌ってるんじゃないかと思います。全国各地で、ひっそりとさりげなく目の前の患者さんのために頑張っている無名の医師たちの活躍によって、日本の地域医療は守られている、っていうのが事実じゃないかと思うんです。(これは医療だけの話でもなく、各分野にそういう無名の実力者たちがいっぱいます。そういうのも素敵だな~と私は思うんですが・・・話がそれちゃうのでこの話はここまでにして。)

私自身はいろんな経緯があってある意味、開き直ってしまっているので(苦笑)実名でTwitterに登録しあれこれ日常の話を書いたり雑談したりしています。病理医って存在が日本国内ではあ・ま・り・に・も!知られてないですし、もうちょっと身近に感じて欲しくって、情報公開できるところはあまり深く考えすぎずに公開していこうかなー、と。

自分のことをどう考えてもヒーローやヒロインのように思えませんし(そりゃ遊びとして考えてみるのは楽しいけど現実は違いすぎる)、医者としてやっていく上では欠点だらけの自分の性格というか人間性?に悩まされつつ、必死でそれをつくろ い患者さんに迷惑をかけないようそれなりに努力して、泣いたり笑ったり怒ったり悩んだりしながら、食べて寝て起きて子供を育てている、変わってる点も多々あるかもしれないけど、まぁ、ごくあたりまえの点もいっぱいある普通の人間で、そういう人が病理医をやってますよー、って。

という風に積極的に個人的な情報を公開している私であっても、絶対に新聞に書かれたくないプライバシーはいっぱい、あります。自分が発信する情報は自分の責任がおよぶ範囲でコントロールしてるつもりですが、そうでない、独り歩きしてしまってる情報もいっぱいあります。

・・・ということで、話を戻します。

妊娠、出産、というのは個人のプライベートな事柄だと私は思います。

地域の医療体制が危機にある、ということを記事にするのに、これから赴任する医師個人のプライバシーを、こんな形で書き立てないでいただきたい、と私は心から、願います。

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2009年9月12日 (土)

女性医師だけの問題ではない

ものすごく久しぶりの、ブログ更新となります。
今回はジェンダーというか男女共同参画というか、育児支援というか・・・とにかく、そういう話です。長くなりますが、ご容赦ください。

沖縄県医師会女性医師部会主催の「女性医師の勤務環境整備に関する病院長等との懇談会」というのに出席してきました。
私は沖縄県医師会の会員ではない(沖縄県公務員医師会の会員ではありますが、沖縄県医師会には会費を払ったりしていません)ので、参加資格がないのではと思っていたのですが、とにかく県内で働く女性医師なら参加資格があると言われたのと、尊敬する先生が「昨年は女性医師の参加者が少なかった」と嘆いてらしたので、出ようという気になりました。

「病院長等」というのはどんな方たちだろう?と思っていたら、県内の公立・民間病院の院長・副院長クラスと事務長さんたちでした。女性医師も含めて50人程度の会でした。

沖縄県女性医師部会による調査結果報告がまずなされました。その後、意見交換。
意見がある人は事前に送ってください、といわれてたので以前、自分の病院の院長に提出した文書(我ながら不満足な文章ですが・・・)を出しました。こんな文章です。
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病院における男女共同参画、育児支援事業の提案

【事業の背景】
・医療、特に専門職(医師、看護師、技師、薬剤師等)に占める女性の比率は時代と共に大きくなっている
・勤務医不足、病院勤務看護師不足が問題となっている
・女性医師、女性看護師が定着できない要素の一つとして、病院としての組織的な男女共同参画の遅れ、育児支援体制の薄さが考えられる

【目標】
1.女性も男性も生き生きと働き続けられる病院
2.職業人であり、生活者であることが両立できる病院

事業内容
1.院内病児保育
 自宅療養を必要とする子の療養の場を院内に確保し、保育者を配置する。
2.緊急的託児サービス
 緊急的な仕事のために学童、保育園等に迎えに行けない職員に代わって迎えに行く等のサービスを、病院として組織的に提供する
3.地域の小児デイケア、学童保育、ファミリーサポート事業等との組織的連携
 地域に既に整備されている事業を活用する窓口を院内に設置する
4.生活日用品共同購入支援
 生活者として必要な物品の購入を院内でサポートする
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女性医師で意見を出していたのは私ともうお一方だけでした。
これだけではなく、病院長さんたち、事務長さんたちに言いたいことは、本当にいっぱいあります。司会の先生には「辛口」と言われてしまいましたが、言いたいことが多すぎて。
何を話したか、思い出しながら書いてみます。

「管理職のみなさまにお願いです。
若い女性医師が妊娠を報告したら、『おめでとう』と言ってやってください。
本音では『この医師不足の時代に、困ったな』と思われても、それを、相手にそのまま言わないでください。
妊娠して精神的に不安定になっている女性医師は、それだけでも病院を辞めたくなりますし、実際に辞めた女性医師も知っています」

「育児に参加している男性医師にもどうか配慮してください。
今の若い男性医師は、自分自身が育児に関与したいと思うのが普通ですし、関与することを配偶者から期待もされています。
世代を問わず、家庭に関与する時間、育児をするための時間を確保するために退職して非常勤医になるのは女性医師だけではなく、男性医師もいるのです。
表向きの退職理由とならないだけです。」

話がややそれます。
私は「女性医師支援」という言葉が二つの理由から、好きではありません。
一つは、女性医師だけを特別扱いしようとする気配が漂うから。
本当に、純粋に「女性医師特有の問題」っていうのは少ないんです。
働く女性に共通した問題、男女いずれの勤務医にも共通した問題が、女性医師ということでクローズアップされやすいだけなんだと思います。
上では育児をする男性医師のことを書きましたが、医師の家庭の育児の問題を女性医師だけの問題にしてしまうのは、問題の矮小化です。

二つ目の理由は、「女性医師」とひとくくりにして扱うことに対する抵抗感です。
たとえば起きている時間のほぼすべてを医療に献身している独身の女性常勤医師に「先生は女性医師ですよね。育児などで離職してしまった女性医師用に離職後の復職支援コースを作りました。先生は必要ありませんか?」と尋ねるのは、大変失礼な話です。
でも「女性医師支援」というものの中身は、そういうことが多いような気がします。
誰かが頭の中で作り上げただけのステレオタイプな「女医」像が一人歩きしている。

話を戻します。
今回、出席して、さまざまな病院の話をたくさん聞けたのは大きな収穫でした。
女性医師が多く勤務している病院、男性医師も育児休暇を取得できている病院、など、素晴らしい例がいくつもありました。
院内保育所を設置している複数の民間病院管理者の話では、子供40-50人を預かって、補助金をもらって、それで も大きな赤字なんだそうです。それを職員への福利厚生としてやっている病院、偉いなー、と思ってしまいました。

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