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2010年10月31日 (日)

病院の公立と私立の違い

Twitterで木内里美さんから大事な質問をいただきました。

内容が内容だけに、Twitterの140字でお答えするのはとても無理、と思ったのでブログ更新を兼ねて、こちらで回答してみます。

木内さんからのご質問は以下の通りでした。

「病院の公立と私立の違いは何なのでしょう?
 公立は網羅性を担保することですか?
 その差分は医療行政として税金で補填されるべきでしょうが、
 民間経営のように出来ない制限がかかったりするのですか?」

まず、私の頭にある「病院」というのは、ある程度以上の病床数(100床とか数100床とか)の規模の「病院」ということになります。診療所(19床以下)だったり、個人開業医さんは含みませんので、そういう前提でお願いしますね。

で。
病院組織の公立と私立の違い、ってホントに見えにくく、わかりにくいんですよね。

他の業界で、病院業界と似ているのは、教育、それも高校かな、って思ってます。
公立病院と私立病院の違い、は、公立高校と私立高校の違い、みたいな印象。

公立高校にもピンからキリまであるし、私立高校もそう。
地域によっては、公立高校しかない地域もあります。
私立高校しかない地域・・・というのもあるでしょう。
地域ごとの差が大きいし、高校ごとの差が非常に大きい。
でも校風、っていうものは間違いなくあるし、その校風が地域にも影響を与えている。
そして、日本の高等学校教育は、私立と公立、両方が担っていますよね、既に。
(最近、公立高校は無料化されたようですが、この件については触れません。)
あくまでも、たとえ、です。

それから、谷田先生の講演からの受売りみたいになってしまいますが。

「民間にできることは民間に」というスローガンが世の中を風靡したため、
公が担っている医療を縮小し、民を拡大することが良しとされるような、
民間万能論的な医療観が全国に、先に、広がってしまった、という印象を私は持っています。民間病院は参入する立場、 広告費をかけて宣伝したりして、攻めの姿勢で医療にガンガン入ってきた。
公立病院は守りの姿勢、というよりも叩かれるばかりの立場になってしまって。
こちら、公立病院の立場からの、反論も十分にできてないんですよね。

民間病院の院長さんなどは「民間には経営のノウハウがある」と言われます。
でも、民間医療機関にあるのは自由であり、自由度があるのが民間、というのが谷田
先生の見方です。公的医療機関は自由がない、と。

企業の経営・ビジネス用語に、「選択と集中」というのがありますよね。
病院の場合は、どういう医療が地域に必要とされているかを認識し実施し、
どういう医療を棄却する(実施しない)か、を経営方針として「選択」し、
実施する医療に先行投資し、病院の人・モノ・カネすべての資源を「集中」させる、
…のが病院における、選択と集中、だと私は理解しています。
(この理解であたっているでしょうか?私は経営者でも何でもない一勤務医ですので…。)

それと「地域に必要とされている」という言葉には、二つの要素があるように思えるんです。

一つ目は、地域の「医療ニーズ」をマーケティングし掘り起こした結果、必要とされるようになった(地域で実施される医療の内容に変化が生じる)という前向きで戦略的な「必要」。
これは裏返せば「提供しない分野を自分たちで決める」ということでもあります。

二つ目は、採算がとれようがとれまいが既得権的に地域にあって当たり前の医療。
「必要」だから実施されないのがおかしい、と地域の多くの人が考えてしまっている「必要」。

うーん、うまく表現できてるか、自信ないですけど。

公立病院は、システム的に、一つ目の「必要」を満たすのが苦手。
そして、公立病院は、二つ目の「必要な医療」を担うことを義務視、当然視されています。
民間病院はこの二つ目の「必要」は経営上、無視しようと思えばできるのではないかと。

公立病院は「選択」「集中」どちらの自由にも乏しいのです。
「医療を提供することが不可能になってしまいました」という結果論的な不可避事項としてしか撤退戦ができない上に、「投資」という概念は公務員の世界にはないようです。
民間病院と競合すると「民業圧迫、民でできることをなぜ公がやっている」と言われるのは公立だけであって、後から参入してきた民間病院にはおとがめなし。

谷田先生が講演会で出されたスライドを思い出しながら、私なりの解釈を入れて作り直してみました。
(図が汚いのは、JPG圧縮しちゃって画像が劣化しちゃったからです…ご容赦ください)

2

3

すべての民間病院、公立病院、がこの図の通りの役割分担ではないのですが、
こうして図にすると、理解しやすくなるでしょうか。

「参入」と「撤退」の自由がある民間病院が羨ましく思えたりすることもあります。
公立病院には、義務的に提供して当然視されている医療のしばり、が強すぎます。
隣の芝生が青く見えているだけかもしれませんけどね。

それでも、民間病院にはできない、公立病院だからこそできる医療、というのがあります。
もちろん公立病院にはできない、民間病院だからできる医療、というのもあります。
対立したりどちらかを併合したりするのではなく、同じ地域の患者さんに医療を提供するために、協力しあうのが一番いい、と思うんですけどね。

地域の医療が、現時点で公立病院と民間病院の両方に担われている(当地はそうです)のなら、どちらかを潰すとかいう方針ではなく、そのバランスを崩さずに継続・発展していけるようにする、というのが理想的な地域医療の将来像ではないかと、私は考えています。

以上、やっぱり、すごく長くなってしまいました。

あくまでも私個人としての回答であって、私の所属する組織等の公式見解でもなんでもないことは、ご理解くださいね。

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