« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »

2010年7月17日 (土)

谷田一久先生講演録

昨日、 テレビ会議を利用した講演会がありました。
講師は谷田一久先生(医療経営学者、(株)ホスピタルマネジメント研究所代表)です。
題して「県立病院立ち寄り講演会」 。
別件で来沖された所を、県立中部病院に「立ち寄って」の講演なのだそうです。

谷田先生のお名前とお考えは全自病協雑誌2008年9月号の「公立病院経営-その複雑さの探求」という論文で存じ上げており、講演を楽しみにしておりました。
今回の講演で私がとったメモを、こちらにアップしておきます。
あくまでも私が理解した範囲のメモということで、ご了承ください。
[* は補足というか、私の理解した内容です]
----------------------------------------------
(1枚目のスライド)
本日の講演ポイント

1.組織像を確認しよう
2.合目的的な表現形態を模索しよう

(2枚目のスライド)

「隙のない組織」から「隙を埋める組織」へ

「隙のない組織」とは?
・仕事を区切って割り振る、分業制
・境界領域は紛争のもと「これは誰の仕事?」「私の仕事ではない」
→境界線に近寄らない、境界線を越えない
・官僚制理論に基づく組織観
・未熟練、経験の浅いメンバーが多い時に有効
・仕事を与えて人を動かす、歯車として人を使う
・野村監督の野球

「隙を埋める組織」とは?
・人間関係学派(人間関係、しがらみ重視)
・人それぞれが「色」を持っているように、核になる仕事がそれぞれにある
・その間にあるもの(スペース)は誰がやってもいい仕事
・プロフェッショナル、ベテランが多い時に有効
・全体を見つつ、自分のポジションを確認するという点で、サッカー選手の動き方に似ている
・星野監督の野球

公立病院は「隙のない組織」方式で動きがち。
だが病院はプロ、専門職の集団。
「隙のない組織」方式では「ああすればいいのに」「こういしたいのに」と思っても動けないことになる。

ベテラン、勤続年数の長い人たちに全体を見るよう、目を覚ましてもらわなくてはならない。

(3枚目のスライド)
緊急性をX軸、侵襲性をY軸にとったグラフ

緊急性(高)侵襲性(高):救命救急対象
[* 心肺停止で要蘇生]
緊急性(高)侵襲性(低):急性(内科)疾患
[* 急性肺炎、急性胃潰瘍]
緊急性(低)侵襲性(高):重度慢性疾患
[* 手術で治癒可能な時期の悪性腫瘍]
緊急性(低)侵襲性(低):軽度内科疾患、療養対象
[* かぜ症候群、脳梗塞後の片側麻痺]

明らかな専門領域(何か一つに特化した医療)は民間。
「選択と集中」を行い病院の特徴として前面に出し、効率的に実施できる。

境界領域、それから侵襲性が極めて高い部分は公が担当せざるをえない。
[* 境界領域の例:脳梗塞後の片麻痺患者に発生した悪性腫瘍。侵襲性が極めて高い例:交通事故による多発外傷]

(4枚目のスライド)
民間中心の医療観

「民間にできることは民間に」というスローガンから、公が担っている医療を縮小し民を拡大することが良しと

される民間万能論的な医療観が広がっている。

民間医療機関の理事長などに言わせると「民間には経営のノウハウがある」という。
しかし、民間医療機関にあるのは自由であり、自由度があるのが民間である。
公的医療機関は自由がない。

「公立病院の存在意義を問う」のならば、民間病院の存在意義も問うべき。

国民皆保険というのは現物給付。
保険者が医療を提供します→保険者が保険医療機関を指定し、そこで医療を提供している。
県は保険者ではないが、国保を運営する市町村をとりまとめる役。

実際にある地方で公立病院がなくなったらどうなるのか、考えてみるべき。
たとえば数十人の医師がつとめる公立病院に数百の入院患者がいるとする。公立病院がなくなったら、患者は地域に残り、公的病院(赤十字、済生会など)にうつるかもしれない。が、医師の多くは他県に移動し、地域の公的病院には残らない。そうすると地域から医師数だけが減ったということになり、公的病院は少ない医師数で多くの患者の診療をするという困った状態に追い込まれる。

民間病院の経営者は「税金を投入している病院は不要、自分たちは税金を一円も投入してもらえず、むしろ税金を払っている」という。それならば、払っているという税額はいくらなのか。自治体の財政規模に占める割合はどの程度なのか、職員は何人雇っているのか。
病院の職員が払う税もある。
逆に公務員という視点で考えると、病院職員は給料の8~9割は自分たちで稼いでいる。庁舎に勤務している通常の公務員の給料が100%税金であることを考えると、給料の1~2割で雇って首長の命令下に病院職員を置いている、なんと(自治体にとって)都合の良い話か。

既に実施している医療、担っている役割を無視してはならない。地域の医療は公と民とで担っているのであり、地域のバランスの中で医療を提供している。
公ができないことを民がする、民ができないことを公がする。

(5枚目のスライド)

事業評価の枠組み

・第一優先:政策目的
(例:高度医療、教育)
・第二優先:効率性
(例:収支改善、サービス向上)
・第三優先:適応性
(例:新規の取り組み)

第一、第二、第三の比率としては、60%、30%、10%で評価しませんか。

病院の吹き抜け:人が集まる場所は建築学的に天井を高くする必要がある(大規模災害などの避難所はすべて天井が高い)
減価償却:小学校や警察、消防も減価償却をするのか?

真実のコストがあるかのように言われることがある。これは、ない。納得性と公平性でコストを決めていくべき

で、地方ごとの内部の話。自治体の議会、住民が納得でき公平性が保たれるコスト。

公立病院はもっと義務的PRをすべき。
究極の情報開示例:「私のカルテ」
家族をケア担当者に巻き込む
坂出市民病院では外来患者の3割が持っている、その3割が自分でも書き込んでいる

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年6月 | トップページ | 2010年8月 »