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2009年1月12日 (月)

県立病院再建計画

危機的な状況が続いている沖縄県立病院について、現場では大きな動きがあっています。

病院事業局トップが、全県立病院職員に対して各地で説明会を開いたのです。
まずは、地元紙の記事をリンクしておきます。
沖縄タイムス
公立医療維持へ決意/事業局・経営会議設立へ 病院側・人材確保求める
琉球新報
「不採算」部門堅持求める 県病院事業局経営再建説明会

この説明会の意義については、1月11日朝刊の琉球新報「追跡2009」がうまくまとめてくれているのですが、Webには見当たらなかったので、OCRで取り込んだものを掲載させていただきます。私のコメントはその後に。
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2009年1月11日 琉球新報 朝刊
当事者議論の第一歩  県の“本気度”探る現場

県立病院再建計画説明会

  県病院事業局(知念清局長)は、七日の先島を皮切りに九日まで県内各地で全病院職員を対象に、来年度から着手予定の経営再建計画の骨子を説明した。現場からは実効性への疑問や、不安などを訴える声が相次いだが、これまで四次にわたり実施された経営健全化計画では現場職員への説明はなく三日間合計で七百人余が出席した説明会開催自体に意義があった。病院職員一人一人が病院経営の危機、事業局は現場の状況を知り、当事者による病院再建に向けた議論が始まる一歩になったと言える。

事業局の変化

 「これまでの計画は誰がいつ、どんなふうにやるのかという具体策がなく机上の空論だった。今回は財源の裏付けがある計画だ。この計画でできなければ病院の再建はない」。知念局長は強調する。
 今回の説明会で局は、来年度にも病院が資金ショートを起こす可能性があることを明らかにし「二○○六年度からの全適(地方公営企業法の全部適用=現在の経営形態)移行時にすべきことをしてこなかった」と自らのマネジメントの悪さを認めた。宮古病院での説明で、同局の小川和美次長は「国や県に支援を求める以上、現場と局が一体となっていくことが必要。これまでできなかったのはなぜか。一人一人が自分はどうだったか考えないといけない。病院の持続的運営は誰かがやるのではない。われわれがやるのだ」と当事者意識に言及した。

不信と期待

 事業局幹部や院長の強い決意に、病院間で差はあるものの、現場職員にも少しずつ変化が見られた。
 中部病院での説明会では、県立病院経営の最大の問題といわれる約百億円の資金不足について「百億円はわたしたちだけの責任ではない。知事部局にも責任を求めていく」との局の説明に対し、医師の一人は「これまでは『あなたたち』だったのが『わたしたち』という主語で正直、うれしかった。局を信用したい。だから信頼できる言動を取ってほしい」と局へ不信と期待の入り交じった複雑な心境を漏らした。
 各病院で共通して出た意見は、黒字化までの本庁を含む事業局職員の固定化だ。知事部局との交流人事で二、三年で幹部が代わることへの病院現場の不満は以前から根強い。「病院事業の再建の道は容易ではない。県は(再建を一大プロジェクトとして政策上位に位置付け、黒字化まで今のメンバーで取り組んでほしい」と、事業局や県側の“本気度”を測る提言もあった。
 自治体病院の再建には、病院だけでなく、病院にかかわるすべての人たちが当事者意識を持つことが必要だといわれる。事業局と現場の変革を仲井真弘多知事、県議らがどうとらえる
か。医療を守るためにもがく県立病院を、民間医療機関を含めた県民がどう支えるかも課題だ。(玉城江梨子)
20090111sinpo1
病院事業局が策定する経営再建計画の説明を聞<病院職員ら=9日、うるま市の県立中部病院

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一職員として、私見をこちらに書いておきます。

過去にも確かに、経営健全化計画、というようなのがあったことを記憶しています。
でも、すべて計画倒れに終わり、県立病院群の赤字は膨らむばかりとなっています。
計画時点で、「この計画はうまくいかない」「失敗するだろう」と思っていました。
病院の現場を知らない人たちが病院の収入を上げ、経費を削減させる、という計画を立てているようにしか思えず「県庁が作った病院の経営再建計画なんて、机上の空論」「こっち(病院)とは無関係」「失敗は目に見えてるけど、あっち(県庁)が作った計画なんだから、失敗の責任もあっちにある」と他人事のようにしか思っていませんでした。

昨年末に、今回の計画が発表された当時は「また同じような机上の空論なんだろう」と思っていました。発表された翌日の新聞記事をリンクしておきます。
これを読んでも、従来とどこが違うのか、私にはあんまり実感を持って感じられませんでした。
「県一般会計からの繰入金の増額など」と一言、書いてあるのですが、そんなの無理に決まってる、と現実味のある計画とはまったく、思えずにいたのです。

これまでとまったく違う、と感じたのは、説明会の方法と内容でした。
従来の説明会は、午後3時から、とか午後4時から、などと業務時間内で、通常業務に追われている現場では参加しにくいものでしたが、今回は開始時間がそもそも午後6時半。
日勤の職員なら、ほとんど揃うことができる時間帯です。

そして会場のセッティング。
事業局トップと病院幹部が数列に渡り机を並べて、説明側として会議室正面に座りました。これまでは一列、病院事業局からの人だけが並んでいたような気が。

説明会の内容も、これまでと違いました。
資料をもとにした説明ではあるものの、資料の種類を一通り示した時点で職員から一部の資料について不適切性を疑う発言があった時には「不適切ということであれば、取り下げても構いません」と、一方的に強制するために来たのではない、という姿勢を事業局トップが明確にしました。
事業局の説明時間よりも質疑応答の時間の方が長く、職員からの質問が途絶えると「まだ何か聞いておきたいこと、聞き残しはありませんか」と何度も質問を促し、この機会にとことんまで話し合っておきたい、という意気込みが、強く感じられました。

説明内容の骨子は「県の責任で、病院を再建する」というものです。
具体的には、一般会計からの繰入金の増額と、病院事業局の主導によるさまざまな経営改善プロジェクト。

沖縄県立病院はずっと、餌(資金、特に繰入金)も十分に与えられないまま、走らされている競争馬のようでした。
必死で走っていましたが「もっと早く走れるはずだ!」と痩馬を鞭打つだけ、というのが病院事業局による、これまでの4次に渡る経営改善計画のように思えました。
馬は騎手を信用せず、騎手もどこまで馬のことを考えていたのか。
計画は失敗しました。

今回、鞭打たない代わりに「餌が足りなかったんだな、十分な餌を持ってくるぞ!」と約束する騎手(事業局)があらわれたんです。
これまで長年に渡って築きあげられた不信は、すぐに払拭できる訳ではありません。
ですけれど、事業局の熱意、本気は、感じられました。
少なくとも当院は、これで、すぐにでも走り出すと思います。

もちろん、不安はぬぐえません。
騎手は約束してくれたけど、馬主さん(沖縄県、もっと具体的には知事)が「いや、餌を買う金はない、この馬に餌を増やす必要はない」といって覆してしまえば、元の木阿弥です。

県立病院事業は、県にとって、どの程度、重要な政策なのでしょうか。
県庁は、県知事は、どう思っているのでしょうか。

そして県民は。

毎年のように生じている、約100億円の沖縄県立病院の資金不足。
この額を沖縄県の人口137万人で割ると1人7249円です。

小さな額ではありません。
「県立病院の民営化反対」「県民の医療を維持せよ」と言葉で言うのは簡単です。
ですけれど、これだけの額を、赤ちゃんからお年寄りまで、全県民が出せるのか。
出せないのなら、どうするのか。

沖縄県立病院は、こんなところまで、もう来てしまっているのですが。

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