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2008年4月17日 (木)

細胞の「顔」をみる

病理医である私が顕微鏡でのぞいているのは「一つ目の国」です。
そこには、目(核)が一つの顔(細胞)ばかり。Cyto1

Cyto2






両目がある(核が2個ある)細胞をみつけると
「おっ?バケモノ(ガン細胞)出現?」
と思います。
注)すべての多核細胞がガン細胞、という訳ではありません。

Cyto3 Cyto4








目がもっとたくさんある細胞が出てくることもあります。
「うっぎゃー、怪物(すっごく悪性のガン細胞)が出てきた!!」
と思ったりします。

Cyto5










悪そうな顔をしている、本当に悪い細胞もあれば
一見、そんな悪そうな顔ではないのに、
細胞の性質としてはタチが悪い細胞もあり、
悪人面(あくにんづら)なのに、ガン細胞ではない、良性細胞もあります。

昨日、子供たちと見てきた映画(仮面ライダー電王&キバ)で、悪人面というだけで道をゆく人たちに次々と手錠をかけてタイホしちゃう楽しいシーンがあったので(娘の一人は笑いながら「リュウちゃん、やりすぎ~」と言ってました)こんなエントリを書いてしまいました。

病理医は、細胞の顔だけ見て、悪人かどうか(ガン細胞かどうか)を診断します。
正確には一つの細胞の顔だけを見ているのではなく、周囲の細胞の状態(仲間が周囲にいる?隣の人は迷惑そうな顔してる?殺された人はいない?などなど)も読み取った上で、診断するんですけどね。

今回、画像として出したのは、お腹の中を覆っている腹膜表面の中皮細胞。すべてHE染色、撮影はNikon Coolscopeで、もともとの倍率は400倍です。
すべて、細胞の名称は「反応性中皮細胞」。悪性中皮腫との鑑別が問題になります。
悪人面の細胞もあるけど、この人(細胞)たちは悪性ではありません。

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2008年4月 1日 (火)

Aiについての個人的な要望

Aiというのが、海堂先生のご活躍もあり、死因究明についての話で最近、話題にのぼることが増えてきました。
Ai、すなわちautopsy imaging。オートプシー・イメージングです。
ちゃんと学会もありますので、Aiって何?と思われた方はどうぞ学会ホームページを。

亡くなられた方の死因を究明するためなどにCT等の画像診断を駆使しようという、21世紀にふさわしい、新しい試みです。
まだ研究途上の面もありますが、解剖率が低い日本で、解剖せずとも画像診断のみで死因を知ることができることもあるのではないか、と期待されています。

さて、Aiについて説明するのが拙文の目的ではありません。
個人的にオートプシー・イメージングの日本語訳で、気になっていることがあるのです。

オートプシー・イメージングは「死亡時画像検死」と訳されたり、「死亡時画像病理診断」と訳されたりしています。
病理医である私としては「病理」が入るのかどうか、が大変、気になります。

きっちり訳語を分けて欲しい、というのが私の個人的な要望です。

①ご遺体に画像診断のみ → 「死亡時画像検死」

②ご遺体を画像診断した後に解剖して病理学的診断 → 「死亡時画像病理診断」

という具合に、オートプシー・イメージングの訳語としての「死亡時画像病理診断」という日本語名称は、画像診断の後に病理解剖が実施された時(画像診断と病理診断の併用)のみに限定して欲しいのです。

前者(①、すなわちご遺体の画像診断のみ)をautopsy imagingというのは、解剖の代用としての画像診断を意味しているのだと思います。(誤解だったらすみません。)
もし「死亡時画像検死」と「死」が2個も入るのが変、というのなら「死亡時画像診断」と呼べばいいと思うのですが。

ところがこのあたりの用語の混乱があります。たとえば以下の記事。
タイトルは「死因究明にAi(画像病理診断)」です。
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死因究明にAi(画像病理診断)

3月31日15時0分配信 医療介護情報CBニュース

 日本医師会(日医、唐澤祥人会長)はこのほど、CT(コンピュータ断層撮影)などを利用した死因究明(Ai)に関する中間報告書を公表した。日医は昨年12月から解剖の補助的な診断方法として画像診断を活用する方法について検討しており、「今後『Aiを解剖の補助的診断方法として検討する』といった表現 を第3次試案に盛り込むことが肝要である」と主張している。

 「Ai」と呼ばれる死因究明の方法が注目されている。「Ai」とは、Autopsy(解剖)とImaging(画像)を合わせた新しい言葉で、「死亡時画像病理診断」と呼ばれている。
【以下略】
--------------------------------------------
解剖の補助的診断方法、ということは、解剖が別、ということで①?

だとしたら

>「Ai」とは、Autopsy(解剖)とImaging(画像)を合わせた新しい言葉で、「死亡時画像病理診断」と呼ばれている

という解説は誤りです。

「病理診断」は、標榜科されたとはいえ、まだ一般への知名度は低いです。
病理診断がされもしないものについて「病理診断」という名称をつけるのは、誤解のもとですし、ご遺体への病理診断(=病理解剖)についての間違ったイメージを世間に提供することになります。

だから、画像診断のみのAiを「死亡時画像病理診断」と呼ばないで。

辺境で働く一人の病理医からの、お願いです。

 4月2日追記。
  偶然ですが、海堂先生のブログが直後に更新されました。
  みなさまにも、お読みいただければ幸いです。

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