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2008年2月26日 (火)

一般向け:子供に語る、福島大野病院事件

前エントリの「子供に語る、福島大野病院事件」ちょびっと反響があったので、細部を修正した「一般向け」を出します。
といっても「一般(の大人)向け」というわけではなく、一般の子供向け、です。
自分の子供のために話した部分を、修正してあります。
一般的な小学生なら理解できるような文章にしたつもりです。

(2008年10月8日 追記)公判終了という結果を受けて少し書き換えました。

子供さん、また、お子さんたち以外が対象でも、福島大野病院事件の概要説明に使っていただけるのなら、本日のエントリは転載可です。

   ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

あるところにね、お腹の大きいお母さんがいたの。
そのお母さんには一人、もう子供がいてね、二人目の子がお腹の中に入ってたの。
一人目の子供はね、お母さんのお腹を切って、お医者さんにとりあげてもらったんだって。

で、そのお母さんはね、次の子を産む時も、同じようにお腹を切って、赤ちゃんをとりあげてもらったの。赤ちゃんは元気に産まれてきて、良かった!おめでとう!ってなったんだけど、そのあと、お母さんのお腹から血が出て、止まらなくなっちゃったの。シャワーみたいにすごい勢いで血が吹き出して、大変なことになったんだって。
それで、なかなか血が止まらなくて、とうとう、そのお母さんは死んでしまったの。

そしたら、そのお腹を切ったお医者さんは警察に逮捕されたんだよ。
そのお母さんが死んだのは、そのお医者さんのせいだ、お医者さんがそのお母さんを殺した、って。

そのお医者さんはね、頑張って血を止めようとしたんだって。
でも、止まらなかった。止められなかった。
そういう時に血を止めるにはね「子宮」っていう、赤ちゃんが入ってた袋を全部、取ってしまうのが一番いいんだよ。
だけど、そのお医者さんは、その前に、そのお母さんと話をしてたんだって。
「あともう一人、子供を産みたいです」ってそのお母さんは言ってたんだって。
お腹を切ったお医者さんは、そのことをおぼえてたんだって。

そのお母さんはね、3人の子供が欲しかったんだろうね。
3人子供がいる、5人家族になりたかったんだろうね。
でも、子宮を取っちゃったら、もう子供を産めなくなっちゃう。

赤ちゃんをとりあげたあと、お腹から血が止まらなくなったとき、すぐに子宮を取れば、血が止まる、っていうのは本当のことだよ。
でも子宮を取ったら、3人目はもう絶対、産めない。
だからお医者さんはギリギリまで子宮を取らないで、なんとか血を止めようと頑張ったんだって。
でも、血がどんどん出てくるのを止められなくて、とうとう最後には子宮を取ったんだけど、遅すぎて、そのお母さんは死んじゃった。

警察は、もっと早く子宮を取ってればそのお母さんを助けられたのに、子宮をなかなか取らなかったお医者さんが悪い、って言って、お医者さんを逮捕して牢屋に入れたんだよ。
警察はね、別のお医者さんに聞いたんだって。
「こんなことがありました。どうしたら、このお母さんを助けられたと思いますか」って。
きかれたお医者さんは「もっと早く子宮を取っていれば、助けられたと思います」って答えて、紙にもそう書いて、警察にあげたんだって。
でもね。
その、別のお医者さんは、そのお母さんとお話、してないからね。
そのお母さんが「もう一人、赤ちゃんを産みたいです」って言ってたの、知らなかったのかも。
警察はその紙をもらって、そのお母さんが死んだのは早く子宮をとらなかったお医者さんのせいだ、って逮捕しちゃった。
だけど、そのお母さんが死んだのは、ぜんぶお医者さんのせいだ、っていうのは、まちがってる。
どんなお医者さんでも、ぜんぶの人を助けられるとは限らない。
悲しいことだけど、お医者さんがどんなに頑張っても、助けられない命が、あるんだよ。

今、日本中で、赤ちゃんをとりあげるお医者さんが少なくなってきてるの。
お腹の大きいお母さんから、赤ちゃんをとりあげる時に、大変なことはいっぱいあって、みんながみんな、無事に産まれるとは限らないし、産んだあとも無事とは限らないの。
でも、それは、全部、お医者さんのせいだってわけじゃないんだよ。
お医者さんが一生懸命に頑張っても、助けられないこともあるんだよ。
お母さんか赤ちゃんかが死んだ時に、そのとりあげたお医者さんが逮捕されて牢屋に入れられちゃうんだったら、赤ちゃんをとりあげるお医者さんがもうとりあげるのをやめたり、赤ちゃんをとりあげるお医者さんになる人が、いなくなったりするんだよ。
でもそれで困るのは次に「赤ちゃんを産みたい」っていう人なのにね。
お医者さんが、わざと殺したんじゃないんだから、逮捕して牢屋になんか入れないで欲しいよ。お医者さんを牢屋に入れても、なんのためにもならない。
赤ちゃんをとりあげる仕事って大事で、それをするお医者さんがいないのって、とっても困るのにね。

お医者さんが牢屋に入れられたあと、裁判っていう、両方の話を聞いてどっちが正しいっていうのがあったんだ。
それで結局「お医者さんは頑張ったけど、そのお母さんを助けられなかった。そのお母さんが死んだのはお医者さんのせいではなかった」ということになって、逮捕されたお医者さんは、牢屋から出られたんだよ。

それは、正しいことで、良かったんだけど。

死んじゃったお母さん、かわいそうだね。
生まれたばかりの赤ちゃんと、もう一人の子供を残して、死にたくなかっただろうね。
お母さんが死んじゃって、子供たちも、お父さんも、かわいそう。

こんな悲しいことがまた起きないようにするには、どうしたらいいのかな。
簡単に答えが出ることじゃない、けどね。

   ☆    ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

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コメント

高校教員です。本校は医学部を目指す生徒が多く大野病院事件に関する記事を進路指導に役立てています。医師の置かれている立場が厳しいこと、失敗(結果的に死なせてしまうこと)は許されないことであることと思っている人がいること、等を伝えることで医学部を目指す覚悟を促しています。このような社会情勢を受けて、生徒の中には、裁かれる側から裁く側に、あるいは、それを伝える側に進路変更する生徒も現れています。医療の将来を担う高校生にも医師の仕事に対する不安と意欲の萎縮がうかがえます。この事件は将来に対する大きな禍根を残したと言えるでしょう。

投稿: 大野 愛 | 2008年9月16日 (火) 20時58分

大野 愛さまのおっしゃる通りで、現在の日本で医師という職業に大きな困難が伴っているのは、残念ながら、事実といわざるをえません。
医療の将来を担う一端であるはずの高校生まで影響が及んでいるという話は初めて聞きました。国の方針としては医学部の定員枠を増やすようですが、それも、遅すぎたのかもしれません。
貴重なコメント、ありがとうございました。

投稿: slummy | 2008年9月19日 (金) 00時36分

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