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2008年2月17日 (日)

この世でもっとも悪いもの

「割りばし事故」を題材としたAtsullow-s caffee先生のブログの記事にお答えする形で。

>亡くなった隼三くんが正義の味方であるなら、「悪」 とはいったい誰のことを指すのでしょうか?

この場合の「悪」は「死」です。
「死」に、ほかなりません。
もちろん親でもなく、かといって医療者でもなく。
隼三くんが避けることができなかった、そして私たちの行く末にも待っている、
「死」です。

ほかに、あるでしょうか?
ありません。

痛ましい思いで、お母さまのコメントを読みました。
大切なお子さんを失った悲しみを、医療者への訴訟という形でぶつけておられるご遺族。
本当に、お気の毒です。
言葉を失います。



古代メソポタミア神話を題材にした「ギルガメシュ王のたたかい」という絵本があります。
その最後のページの、途中から終わりまでを引用します。

-------------ここから引用-------------

「死こそ、この世で、もっとも悪いかいぶつだ。」とギルガメシュは思いました。
「死が、エンキドゥを我からうばいさった。
 いつの日か、死は、我を人びとからうばうだろう。
 死こそ、ほろぼすべきもの。
 死にうちかつ方法をみつけなければならぬ!」

「我は行く。永遠の命をえるひみつをもとめて。
 それが、わが最後の旅となるであろう。」

-------------引用ここまで-------------

第1巻「ギルガメシュ王ものがたり」でエンキドゥという無二の親友を得た強大な王、ギルガメシュ。
王は、第2巻でその親友の死に遭遇します。
そして上記のごとく永遠の命を求めた旅が、第3巻「ギルガメシュ王さいごの旅」。

その旅がどう終わるのかは、ここでは説明できません。
興味を持たれた方は、ぜひ本を手にとって読んでいただきたく思います。

ボランティアで行っている小学校の読み聞かせで、この1年、ずっと使っている本のシリーズです。
小学校3,4年生から理解できるようですが、最も反応が良いのは5,6年生。
家で読んで聞かせるなら、3,4歳児でも何かを感じているようです。
子供から大人まで堪能できる絵本だと思います。

ギルガメシュ王ものがたり bk1 amazon009559540000

ギルガメシュ王のたたかい bk1  amazon01063920

ギルガメシュ王さいごの旅  bk1 amazon
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コメント

>「死」に、ほかなりません。
でもマスコミ他はそうは理解してくれていないようですよ。

投稿: あずさ | 2008年2月17日 (日) 17時41分

あずささん、コメントありがとうございます。

医学の進歩によって、死を避けられるかのような誤解は、なぜ、どこから広がったのでしょうね。

人の死、特に病院における死について医学的に検討する病理医の立場では、ずいぶん進歩したとはいえ、医学にできることは本当に、本当に、わずかであると思わずにはいられません。

投稿: slummy | 2008年2月18日 (月) 20時59分

死が悪とも言えますが、死があるから生があるのでは。自分は死後49日目に生まれ変わると信じてるので、生と死の区別は必要なく、固体の生死は単なる区切りだと固く信じています。
 生まれ変わりがないとしても同じ事で、土(自然)から生まれ、土に戻るのであり、どのみち生は自然の一部なので、生も死も自然現象ですから、死が悪とは思えないのです。
 死が悪という思想ないし感情があるために、医療の結果によるあるいは医療行為とは関係ない死が、医師らの罪みたいにされてしまうのでは。

トルストイの定義、『善とは人と人とを結び付けること、悪とは人と人とを離反させること』。これこそ真理だとみなします。明白なミスによる死を隠すこと、避けられない死に直面した遺族が攻め立てること、どちらも悪。

投稿: 澤田石 順 | 2008年6月16日 (月) 22時46分

澤田石先生、大変遅いレスにて失礼します。

先生のおっしゃるように、生死を善悪二元論にしてしまうこと、それ自体が間違っているかもしれませんね。

「死を滅ぼす」「死にうちかつ」ことを目的とした、ギルガメシュ最後の旅は大変な困難の末に、失敗します。
失敗しても、ギルガメシュが英雄であることに変わりはない、と私は思っていますけれど。

話は違いますが、寺山修司の詩に「僕は不完全な死体として生まれ、何十年かかって完全な死体となるのである」という言葉があります。(「懐かしのわが家」)
死と生を峻別するのではなく、少しずつしかも着実に死に近づく存在として生をとらえているところが、面白いなぁと思います。

投稿: slummy | 2008年8月23日 (土) 00時00分

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