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2007年6月30日 (土)

県立病院職員の定数について

R・Y・Uさまから質問を頂戴したので、私が知っていることをこちらに書いてお答えとさせていただきますね。

以下、R・Y・Uさまのコメントから質問部分を引用させていただきます。

>沖縄県の県立病院勤務医数は定数に達しているのでしょうか?沖縄は医師不足なので
>定員割れしていると思っていましたが、病院事業局長の答弁を聞く限り「医師は
>めいっぱい雇っている、これ以上は雇えない」という風に聞こえるのですが。
>そうであるならば、産科医の長期雇用などできないのではないでしょうか?
>また、過重労働を認めているのに定数を増やせないのは予算がないからでしょうか?

県立病院の正職員数は、定数で定められています。
これについては新聞報道がいくつもありますので、ご参照ください。

「財政・人材難改善を」/県立病院長・切実訴え 2006年10月18日
「看護師足りず33床休止 県立中部病院」 2007年5月17日

伊関先生の解説もリンクしておきます。
「看護師不足で県立病院機能まひ 沖縄県立南部医療センター、中部病院」 2006年7月24日

さて私の勤務先の医師の定数は、何人くらいだと思いますか。
現在、常勤医がいるのは内科・小児科・外科・整形外科・脳外科・耳鼻科・眼科・泌尿器科・麻酔科・泌尿器科・病理科。(かつては産婦人科と放射線科の常勤医もいました。)
病床数293、病床稼働率90%以上。24時間365日の救急センター、ICU,HCUあり。
附属診療所(離島など)の医師も定数に入り、現在は離島2ヶ所に一人ずつ医師がいます。

という医療を提供する、正職員医師の定数は、38人だったかな。
すみません。厳密な数字ではありませんが、大体そのあたりの数字だったと記憶しています。
この定数、復帰(1972年)当時からほとんど数が変わってないという噂も。

たとえば、私自身が当院初めての病理医として採用された時は内科医の定数枠を使ったと聞いています。要するに内科医一人を削って病理医一人を採用した、ということです。
その後に病理医の定数が正式にできたのか、今に至るまで知りません(苦笑)

定数については、これで少しはご理解いただけたでしょうか。定数を増やせない理由については、私はコメントできる立場にありません。

私の勤務先の産婦人科の定数は空いたままになっていて、いつでも定数(3人)雇える状況だと聞いています。
しかし、今回残念ながらキャンセルになってしまった産婦人科医はその定数を埋める形での常勤医ではなく、こちら経由の「派遣医」で長期雇用されるはずでした。派遣医は定数の枠外であるのみならず、待遇についても正職員とは違って県の条例にしばられないため、正職員の医師とは異なる勤務条件が可能だとも聞いています。
現在の県立病院で産婦人科医を雇うとしたら、まずは定数の枠外で、じゃないかと私は理解しています。

ただ、私がどこまで正確に理解しているか、というのは・・・自分の勤務先の定数すら正確に知らないような一職員の非公式発言、ということで割り引いておいて下さいね。

追記。定数条例を沖縄県のホームページで探して、ようやく見つけました。ここです。

>(9) 病院事業局の職員 2,294人

この1行をみつけるのに、1時間くらいかかってしまった…。

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新聞報道に一喜一憂

あまり知られていない事実から先に書かせていただきます。

新聞記事にもなりませんでしたが、防衛医大による派遣(詳細は「防衛医大の先生方、ありがとうございました」をお読みください)が終了した後、4,5,6月と1名の産婦人科医が内閣府&県のドクターバンク事業で派遣されて来ていました。
派遣は月に5日間だけですので実質的な診療にはほど遠く(だから新聞記事にもならなかったのでしょう)、ひっそりと来てひっそりと帰られた感じでしたけれど、短期間とはいえこんな遠くの地の病院に来て、確かに病院内にいて下さった先生方に私は感謝しています。

産婦人科医が長期派遣される、と新聞に載ったのがこの月曜日(25日)。
6月までの派遣の延長線上?のもので、7月1日から常勤の産婦人科医が1名(派遣ではありますが)病院に来るものだと私も思っていました。
しかし、産婦人科医の「一身上の都合」でこの話は消えてしまいました。
(これ以上は個人情報ですので、詮索しないで下さいね…。)

新聞報道に一喜一憂、という感じでした。
まぁ、私は一職員にすぎないんで、仕方ないんですけど。

    ☆      ☆      ☆      ☆      ☆

今回の件は、情報管理などの点では甘かったかもしれませんが、県上層部(病院事業局、ドクターバンク事業の担当者)はよくやって下さった、と私は思っています。
(私ごときがこういう評価をしたからってどうってことはないのは承知してます。
 まぁ、少なくとも一人の職員はそう思ってる、ということで。)
人事は「縁」という面が確かにあります。結果的に今回はご縁がなかったのですけれど、一歩手前までこぎつけられたのは、これまでと比較して格段の進歩です。

今回、長期の派遣医が来なかった、という結果にとらわれすぎてはならないでしょう。
それほど、今回のやり方が間違っていたとは私には思えないのです。
公的事業としての制約の中で、精一杯、やって下さったと私は思います。
現時点で結果だけを見ると残念ながら失敗に終わってしまっているのですけれど、県としての動きは2年半前、産婦人科休止以前とは違っています。
県としての動きの中に、現場の医師の視点が、ちゃんと入っているのです。

この方法はうまくいかない、と早急に判断を下すのではなく、今回はダメでも、あきらめないで続けて欲しいです。
国内はどこでも激しい産婦人科医争奪戦(?)なのですから、厳しい戦いになるのはどうしても避けられないでしょう。
それでも、あきらめないで…あきらめないで、頑張っていただきたいんです。

以上、一職員として、そして地域における産婦人科二次診療の再開を心から願い続けている一住民としての感想でした。

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2007年6月27日 (水)

悲劇を繰り返さないために・続き

コメントくださった脳外科見習いさま、Yukitakeさま、hot-coffeeさま、
山口(産婦人科)さま、道標主人さま、Dr.Iさま、三上藤花さま、鴛泊愁さま、
そしてトラックバック下さった諸先生方、ありがとうございました。

山口(産婦人科)さまのコメントに返答する形で、今回は書きます。

>100人中5人位お産で死ぬのなら、お産で死んでも「運が悪かった」で
>済まされるでしょう。
>ところが10万人に5人になると「お産で死ぬはずがない」「医師が
>ミスしたのでは」となって訴訟が増えるのです。

周産期死亡率と一般の認識については、おっしゃる通りの側面があるかも
しれませんが、訴訟にまでいたるのは別の要因があると私は思います。
今回の訴訟についてはご遺族が自分たちだけの意志で訴えたとは思えない
経緯が指摘されています。今回のようなお気の毒な女性の死を、関与した医師
個人の責任として訴えるのは間違っていますし、このような訴訟を「よくある
訴訟」に、決して、してはならないのです。

今の60代、70代の人たちに聞けば、お産で亡くなるお母さんや赤ちゃんが、
どんなにありふれた存在だったかを、教えてもらえますよね。

「昔はお産でお母さんや赤ちゃんが死んでいた。今は違う。」

これが60代以上の日本人の、一般的な認識でしょう。
若い世代になるほど「お産では誰も死なないのが当たり前」になっています。

この「今」は、産婦人科の先生方個々人の多大な努力と献身の上に維持されて
いる、非常にもろい「今」だということを、私たち医師は知っています。
このような訴訟が、献身的、良心的に努力を続けている産婦人科の先生方を
深く傷つけるものであり、先生方の医療への熱意を失わせかねないものだと
危惧しています。熱意あってこそ、多くの母と子の命が救われているのに。

>周産期死亡率を下げるために努力してきた先人たちはわれわれの訴訟される
>率を上げるために努力してきたのだろうか、とむなしくなります。

周産期死亡率を下げようと、いや、目の前の命の火を消してはならない、と、
一人一人の妊産婦を見捨てず献身的な努力を続けてこられた産婦人科の先生方の
おかげで、多くの母と子が助けられてきたのです。私自身も、緊急帝王切開で
子と共に命を救っていただいた身であり、このご恩は一生忘れません。
先生方がむなしさを感じなくて済むような社会でありたいものです。


追記:ちょっと思う所がありまして、前の記事にいただいたコメントの中で、三上藤花
 さまのコメントのみ、ブログ主だけに見える非公開に変えさせていただきました。
 内緒話、ということでご容赦くださいませ。

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2007年6月25日 (月)

悲劇を繰り返さないために

本日、大淀病院の民事訴訟開廷と聞きました。

まず、亡くなられた女性に心からの哀悼の意を表し、遺されたご家族のお気持ちに寄り添いたいと思います。

この事件の詳細はこちら、産婦人科学的な見地からの意見はこちら

奥様を亡くされたご主人、お嬢様を亡くされたご両親、お母さんを亡くされたお子さんのお気持ちは、たまらないものでしょう。
悲しみがなお癒えぬ人たちが、二度とこのようなことがないように、と願う気持ちはわかりますし、その気持ちをどこかに向けたい、というのも無理からぬことかとは思います。

でも、産婦人科医個人を責めるのは間違っています。
妊産褥期の死亡には、どうしても防ぎ得ないものが、一定の数、必ずあるのです。
「お産で死ぬなんて信じられない」という思いは、心情的には理解できなくもありませんが…事実は、残念ながら、その心情に反しているのです。

同じような悲劇を繰り返したくない、というのなら、訴訟にしないで欲しいのです。
今現在、お産に従事している産科医一人一人を支え、守るべき時が来ているのです。
そうしないと、これまで助けられた母と子の命も守りきれない、という所まで、今の日本の産科医療は追い詰められている、と思います。

私は、大淀病院の産婦人科医を支持します。

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