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2007年2月13日 (火)

相貌失認について

私は昔から、人の顔と名前をおぼえられません。
こういうのを相貌失認というようです。
職業上必要な、細胞や組織の顕微鏡画像なら網膜に焼き付けたように記憶できることもあったりするんですけど。

たとえば、娘の担任の先生がめがねをかけている人だったかどうかすら思い出せません。
ぼやっとは思い出せるので、次にあった時には「そういえばこんな顔の人だった」とわかるでしょうが。
子供の頃、父が半年とかの長期出張に出かけたときは「お父さんの顔を思い浮かべられなくなった」とベッドで泣いたりしていました。

それでもまだ、患者さんに接しない病理医だからいいんだと思います。
昨日の福祉まつりでは、訪れる人がお客さんなのか病院職員なのか(私服ですからね)、
それとも資材を提供してくれている業者さんなのかすらわからず、
なんども「すみませんでした、失礼しました」と赤面です。

他にも、体験談を一つ。
大学受験の時に、隣の席になった人と親しくなり夕食を一緒にとる約束をしました。
いったん宿に戻ってから待ち合わせたのですが、
待ち合わせ場所で、相手の顔がどうしても思い出せない。
自分の忘却を棚に上げて(笑)相手が私を見つけてくれるかどうかの心配ばかりしていました。
結局、無事に見つけてもらえました。

このように相手の存在(その人と話した内容や一緒にいた状況など)は記憶していても、顔を忘れます。
同僚の医師たちは数年がかりでおぼえました。
何度も人違いをして「それはボクじゃない」と言われたりしながら。
学会などで、しばらく会わなかった相手に親しげに声をかけられて
「ええと?この先生、誰だったっけな?」と困ることはしばしばあります。

主な対処法は3つです。
1.「失礼ですが、お顔は記憶にあるんですけど(←これは大嘘!)お名前はなんでした?」とストレートに尋ねる。同窓会ではこのセリフばかりでした。
2.「ええと、鈴木さんでしたっけ?」(沖縄なら比嘉さん?)などと適当な名前で呼びかけて、相手の訂正を期待する(もちろん天然ボケとしての扱いを期待して、です)。
「ごめんなさい、きれいにしてらっしゃるから(お痩せになったから、など応用各種)見違えてしまって。」と口八丁でフォローしたりもします。
3.徹底的に名前を呼ばずに用を済ませることも多いです。
もともと顔と名前を一致させたいほどの相手ではない、今、私が話している相手が誰なのかわからなくても私の人生に大きな影響はない、と割り切って、相手が怒り出さない程度の対応にします。

人の顔と名前を記憶できないのは、私の脳の欠陥なんだと以前から思っていますが、あまり深刻には考えていません。
私にとってかなり大切な人でも顔を忘れたりして、相手の機嫌を損ねたりもするんですが、大切な人については、顔を記憶できなくともその人の「存在」をしっかり記憶しています。
顔を忘れられていた人が不愉快になるのは大抵、存在を忘れられている、軽んじられていると思うからのようなので、不本意にがっかりさせてしまった相手には「人の顔がおぼえられないだけで、あなたのことを忘れていたわけではありません、こんな細かいこともちゃんと記憶しています」と相手についての細かい記憶を披露して、大切な人だと思っていることをアピールしたりします。
顔以外のことは記憶されている、と理解してもらえればそれほど困ることはありません。

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コメント

YANBARU先生のコメントから来ました。あのままコメントを書くと、主記事から外れそうなのでこちらにコメントを書かせていただきます。

そうなんです、私も人の顔が憶えられません。これで私も学生時代、社会人になってから今まで困ることがたびたびでした。だけど自分で気が付いたのは高校生になってから。小学校中学校は名札をつけていたので、顔が憶えられなくてもなんとかなっていたのです。

今も人の顔を覚えられません。何度か会うと憶えていけますが、一度二度ではまず忘れている確率のほうが高いです。
だから街中で人にあって、自分が覚えていなくても、こちらに向かって親しげに話してくればそれに調子を合わせて分かったふりをしています。しかし心の中では『えーっと、この人誰だっけ・・・??』とリフレインしています(^_^;)

投稿: yurin | 2007年2月13日 (火) 13時12分

slummyさん、ありがとうございます。
私だけではなかったんだなぁと…

私は3番の方法しか取れません。顔だけでなく、相手自体を覚えるのも苦手なので(全てにおいて記憶力が悪いので)、何となく話を合わせているだけです。その緊張ゆえ、大規模な集まりを避ける傾向もあります。

これも(これこそ)解決方法は無いので受容するしかないんですよねぇ。

しかし、ずっと苦しんでいた相貌失認と最近になって気付いたASが関連していたなんて。それを知ったのは、先日行った頭痛外来の先生に言われたからなんですが…

頭痛自体の原因(緊張性頭痛との診断)も、対人緊張って事になりました。つまりASが原因ですね…

投稿: mario | 2007年2月14日 (水) 08時45分

slummyさん、ちょっと興味があって読ませていただきました。

私は、人の顔と名前が一致しにくいことで困っています。
今後関わっていかなければならない人の名前を覚えるのに苦労します。
そんな時、漢字で書くことにしてます。

突然現れた見覚えのある方とお話しなければならなくなった時、思い出そうとしているのは「名前」ではなく「漢字」です。

「漢字」の並び方を思い出して頭の中で読んでみる作業があります。

「石井」さんと「石川」さんをよく間違えてしまいます。いつも「どっちだっけ?」と声に出す前にためらいます。

相貌失認とはちょっとずれているかもしれませんが、私も人の名前がすぐ出てこない困難さを抱えています。

投稿: HIKARI | 2007年2月15日 (木) 21時15分

こんにちは。私は事故による突然の発症で、対処法がわからず、苦しんでいます。街中、テレビ、家族、はもちろん、自分の顔も覚えられず、顔見知りが一人もいません。まるで自分が宇宙人にでもなったようです。でも、工夫して、立ち向かっていらっしゃる様子、勇気づけられます。また、対処など教えてください。

投稿: かおナシ | 2011年11月28日 (月) 12時20分

slummyさんは、私と同等くらいに重度かな?と勝手に思っています。失礼ながらご結婚されてお子様もいらっしゃる様子、顔の好みとかありましたか?私は事故後顔の好み、優劣が全く分かりません。美人だなと思っていた、女優さん、不細工と思っていた芸人さんの顔の優劣がつきません。どんな感じですか?

-----slummyです。お返事遅くてすみません。

確かに私、顔の好みは、ほとんど、ないに等しいかもしれません(笑) 誰かに「あの人って美人(美男)だよね」とか言われてもピンとこない、ということがほとんどで、一般的にはどういう顔が美男美女だとされているのか、を努力して学習したような感じです。人間、外見より中身、顔より性格ですよ!ってかなり本気で思ってます。蓼食う虫も好きずきっていう、ことわざもあるじゃないですか。

話はそれますが、過去に双子(性別が一緒の双子)を見分けられるようになったのは、ほとんど「声」から、でした。今も職場の同僚に双子がいて一応、見分けがついてるのですが、外見的な特徴ではなく、雰囲気?みたいので見分けていますので二人がどう違うのか、を他人にぜんぜん説明できません。

投稿: かおナシ | 2011年12月 7日 (水) 16時04分

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