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2006年9月 9日 (土)

術中迅速

今日もまた、大きな手術の術中迅速診断があった。

1週間前に電話で予約があり、切除断端の評価をしてほしい、と執刀医。

切除断端、というのは今回手術になる患者さんの身体で、切除できる最大限
ギリギリの部分である。それ以上広範囲はとれない、という所の端っこ。

今回の手術では断端を先に病理に出す、ということだ。
1.断端陰性(ガン細胞がそこにない)なら、それから根治手術。
2.断端陽性(ガン細胞がある)なら、ガンをとりきれないということで、手術終了。

1.になった場合。
根治手術は、まぁ大体6時間から8時間くらいかかる、大きな手術。
患者さんの負担も大きい。
が、手術が成功すれば、この患者さんはこのガンで死ぬことはない。
他の病気さえしなければ、寿命をまっとうするだろう。
2.の場合は・・・このガンのために死ぬことになるだろう。
何年生きられるだろうか。
長くて数年、早ければ1年もたないかも、というのが通常の予測だろう。

・・・と、ここまでが、今回の術中迅速診断の前提。

朝から手術が始まった。
昼頃に出る、と言っていた切除断端が、実際に出たのは午後3時。
技師さんに捺印細胞診標本と、迅速凍結組織標本を作ってもらう。

細胞診標本が先にでき、顕微鏡での診断開始。
かなり怪しい・・・ガンがあるのでは?
しかし細胞診だけで確定できるほどではないので、組織標本を待つ。

できあがってきた組織標本を顕微鏡でみて、頭を抱える。
評価できる細胞が少ない・・・どうしよう。
炎症を起こした後らしく、ガン細胞があると予想される部分の細胞が
ほとんど剥がれ落ちてしまっている。これでは判らない。

標本をもう一度、作り足してもらう。
何枚も標本を作ってもらったら、さっきよりは評価できる細胞が増えてきた。
ガン細胞のようにも思えるが、100%ガン細胞だとは言えない。
激しい炎症の後では、ガン細胞に似た細胞が一過性に出てくることがある。
炎症があった証拠はたくさん周囲にあるので、これはガンじゃない可能性がある。

執刀医に正直に連絡することにした。午後3時半、手術室へ電話。
ナースが執刀医にとりつぎ、執刀医と直接、話した。
「炎症が激しくて難しいです。ガンがかなり疑われますが、確定できません。
どうしますか。」
執刀医は即答した。「まだもう少し先まで切れるので、もう一回、出します。」
断端判定をやり直す、ということだ。
「わかりました、お待ちしてます」と電話を切った。

午後4時、次の断端が来た。
今度こそはギリギリのギリ、もうこれ以上とれない、という切除断端だ。
さっきと同じように標本を作ってもらった。

今度の細胞診標本には、ほとんど細胞がついてない。
組織標本は、また、評価できる細胞が少ない。
少ないが、今度見えている細胞は炎症後の再生細胞と思えるものばかり。
・・・よし、ここで結論を出そう。

午後4時20分。手術室に電話したら、執刀医がすぐ出た。
「陰性です。はっきりガンと言える細胞は見当たりません。」
「ありがとうございました!」
これで、術中迅速診断は終了。
今日のこの手術における、私の役目は終わった。

電話を切ろうとした直前に、執刀医の気合が入った声が遠くに聞こえた。
「よーし、切るぞ!!」
私の役目は終わったが、彼らにとってはこれからが手術の本番、である。
手術が終わるのは深夜だろう・・・。

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