ICD-11の日本語化、進捗状況について

先日の勉強会で知った内容を、こっそりブログ更新する形で情報共有しておきます。

 

ICD-11(2023 年1月版)の分類の表記に用いる用語の和訳案について

 

このリンク先に「委員会取りまとめ結果(令和6(2024)年7月26日)」というpdfがあります。

これが出るのを私は首を長くして待っておりました。

ICD-11が日々、進化しているのは存じあげておりますが、日本語化されていないのが日本語話者としては残念でした。

Googleなどのブラウザの訳が使えない、というのもあって、標準的な「使える」和訳が欲しい…と思っていたのです。

とりあえず2023年1月版のICD-11を日本語化する、という噂は聞いておりましたけれど、ようやく、ようやく公表されました。

pdfで414ページもありますけど、私は気にしない。

包括的な和訳案の公表、ばんざい!です。

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2024年11月29日 (金)

おきなわ#7119電話相談

救急車を呼ぶか?呼ばないか?

迷った時は#7119に電話しましょう!

おきなわ#7119電話相談

https://www.pref.okinawa.jp/bosaianzen/shobokyukyu/1003583/1030828.html

https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html

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2020年7月18日 (土)

名桜大学における新型コロナウイルス感染症対策に係る用語の定義と接触者の受講について

久しぶりの更新です。長ったらしいタイトル、ご容赦ください。

 

さて、名桜大学では新型コロナウイルス感染症対策を行いながら対面授業(学生が来学しての講義)を実施しています。

対面授業の開始前に定めた(というか私がお役目上、原案を作成し関係者と調整して大学での承認を受けた)文書を、こちらで公開します。下のリンクからダウンロードできます。(pdf,494kb)

ダウンロード - e5908de6a19ce5a4a7e5ada6e381abe3818ae38191e3828be68ea5e8a7a6e88085e381aee5ae9ae7bea9e3818ae38288e381b3e58f97e8ac9be381abe381a4e38184e381a6.pdf

少し解説します。

名桜大学では「濃厚接触者」を「一次接触者」とし、濃厚接触者に濃厚接触している人を「二次接触者」と定義しています。

例として、学生さんが同居しているご家族が勤務先で新型コロナウイルスの患者と接したならば、ご家族が「一次接触者」、学生さん本人は「二次接触者」となります。

そして受講に際して、名桜大学では「二次接触者」を「非接触者」と同じに扱います。

まぁ、それだけの話です。この定義と扱いは、現在も名桜大学において有効です。

なおこれを定めた後、厚生労働省での新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領が更新されましたが、最新版(5月29日付)は「感染経路が明らかではない患者が散発的に発生しており、一部地域には小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態」を想定し「無症状病原体保有者」の扱いについて主に定めています。これは現時点までの当地(沖縄本島北部地域)における状況とは異なりますので、名桜大学での定義は変更していません。

また、沖縄県内では米軍基地内での患者クラスター(集団)が確認されていますが、幸いなことに地域内で「感染経路が明らかではない患者が散発的に発生する」という状態は7月18日現在、確認されていません(今後もそうならないことを願っています)。

ですけれど接触に関する問い合わせは多いため、名桜大学の保健センターからお返事している内容をQ&A形式でこちらに載せておきます。

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注)以下のQ&Aは質問者として名桜大学の学生または教職員を想定しています。学外者からの質問は想定していませんのでご注意ください。

Q1:家族が米軍基地内で働いています。私は大学構内に立ち入らない方が良いですか?
A1:いいえ、来学可能です。
 もしご家族がPCR検査対象となった場合、保健センターにご一報いただけるとありがたいです。
(※検査対象のご家族が一次接触者、本人は二次接触者となりその場合も来学可能です。ご家族の検査が陽性であれば、本人は一次接触者となり、2週間の健康観察となります。)

Q2:米軍基地の中で実施された英会話スクールに参加しました。私は自宅待機の対象者ですか?
A2:はい。2週間の健康観察と、遠隔授業をお願いします。(Q3&A3参照)

Q3:アルバイト先でアメリカ人と接する機会がとても多いです。私は大学に来て良いでしょうか?
A3:アルバイトの場所が、米軍基地の中であるか、米軍基地の外であるかで異なります。
  米軍基地の中であれば、現在の在沖米軍基地は移動制限がありますので、国内感染流行地(市町村)または海外流行地と同様に考えて、2週間の健康観察期間、自宅待機をお願いします。※「6/15更新【学内者向け】名桜大学新型コロナウイルス感染症拡大予防のためのガイドライン」には、 流行地への渡航について定められています。
  アルバイトの場所が米軍基地の外であるならば、保健所によるPCR検査の対象者となるかどうかが一つの目安となります。(濃厚接触が疑われれば保健所から検査を求められます。)心配であれば、保健センターにご相談ください。

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上記のQ&Aは「米軍・アメリカ人」を例にしていますが、県外の都道府県から来る観光客、もしかしたら国外からも来るようになるかもしれない観光客との接触についても、これに準じた扱いとなる予定です。

本格的な流行を経験していない当地でも感染者、濃厚接触者を差別するような雰囲気が生じつつあり、そのような雰囲気を危惧しています。

過度に怖がる、忌避するのではなく、また相手の属性等による先入観で決めつけながら考えるのではなく、現実を見据えつつ「拡げない」対策を実施したいものです。

全国ニュースなどでは、どうしても人口の多い地域、患者が多発している地域のことばかりが報道され、当地のような人口密度が低く患者も少ない地方、辺境の大学では状況が異なり、独自に定義せざるを得ないことが多々あります。

以上、当地のみならず他の地域の大学関係者や、今後の入学を検討している高校生のみなさんに、こういう情報は参考になるかと思い、情報提供いたしました。少しでも参考になれば幸いです。

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2020年5月28日 (木)

養護教諭研修会用資料

5月28日(木)養護教諭を対象とした研修会(オンライン)を実施します。

その資料をこちらに置いておいます。

 

資料1 名桜大学における用語の定義(接触者など)

ダウンロード - e68ea5e8a7a6e88085e381aee5ae9ae7bea9e3818ae38288e381b3e58f97e8ac9be381abe381a4e38184e381a6efbc88e9a48ae8adb7e7a094e4bfaee4bc9ae794a8efbc89.pdf

資料2 文部科学省による衛生管理マニュアル

https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/mext_00029.html

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2020年4月13日 (月)

名桜大学国際学群2年次対象 診療情報管理士 オリエンテーション(資格説明会)

名桜大学国際学群2年次を対象とした動画です。

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2019年8月 4日 (日)

岩政教授の思い出

岩政輝男先生のご逝去の報を受けて、個人的な追悼文(思い出話)をこちらにアップいたします。
(約3000字。長文です。)


先生は琉球大学医学部医学科の初代病理学教授のお一人であり、その後医学部長、琉球大学学長にもなられました。
が、病理医である私にとって岩政先生は病理学者、病理学の教育者、尊敬する先生でした。

先生の講義を初めて受けたのは大学3年生の時です。
病理学総論の講義でした。

講義で、先生がお持ちの膨大で圧倒的な知識を私たち学生に与えようとしておられるのを感じました。
細胞の分子病理学的な背景を、詳細に情熱をもって語られるのですが、板書は少なく配布資料はほとんどなく、35㎜スライドも毎回あったかどうかは覚えていません。
教えられるのは成書と言われるテキストに書いてないことばかり、体系と系統が私には見えず、ノートをとっても全くついていけない。

参考図書としてご紹介くださった日本語の教科書(森道夫「新細胞病理学-小器官病理学から分子病理学へ-」当時は新刊書でした)を購入し読んだのですが、先生の講義の1割も理解できず、困った私は生化学の教科書(ストライヤー第3版のペーパーバック)を講義に持ち込みました。
授業中に講義を聞きながらノートをとりつつ、ストライヤーのページをめくり先生が教えておられる内容に関連してる部分にマークをつけ、帰宅後マークした周辺を読み理解につとめるようになりました。
が、それでも半分も理解できていなかったのではないか、と思います。

不思議と「難しすぎる、どうにもならない」とは思いませんでした。
知的好奇心を刺激され、この先生が教えようとしていることを理解したい、と当時の私は思い、必死で講義についていこうとしていました。
講義でとりあげておられたのは、教養から専門(医学)の講義が始まったばかりの3年生の誰もが知っていそうな疾病ではなく、稀少疾患ばかりでした。

たとえばLysosomal storage disease(ライソゾーム病)の講義。
岩政先生から「糖原病」の疾患概念について、教わりました。
「糖尿病」なら有名ですが「糖原病」は先生の講義で初めて知りました。
強く記憶に残っているのは糖原病2型、Pompe病の講義内容です。
匿名の患者さんの顔写真をスライドで提示されました。
約30年前の講義です。

患者さんは女児。
目が大きくて可愛い!沖縄の女の子かな!?と思いました。
次に出されたスライドは、死後剖検時の心臓が横断的にスライスされた臓器写真。
そして心筋の組織像でした。

・・・えっ、あの女の子、本人の心臓?
解剖されたということは・・・亡くなった、ってこと?

学生の私は感情を刺激され、驚き、戸惑い、先生の話の展開についていけなくなりかけました。
しかし、そのような感情など置いてきぼりにするかのように、先生は淡々と心肥大の肉眼所見、組織所見を説明なさいました。
先生の平静なご様子に私も冷静さを取り戻し、鉛筆を手にノートに向かいました。
糖原病Ⅱ型、心筋組織肥大と記しながら、可愛らしい女児の顔写真とその死、死因となったライソゾーム病を結びつけて脳内に刻みこみました。

岩政先生は講義でそんな風に個体、臓器、細胞、分子生物学のつながりを私に教えました。
生と死、マクロからミクロ、そして病態解明、もちろんその先の治療へ。

余談ですが、今世紀に入ってから、Pompe病は糖質代謝酵素の補充治療で進行が抑制されるようになりました。
岩政先生とそんな話をしたことはありませんが、治療法の確立が近い将来、実現することを先生はご存じだったのではないか、と思ったりします。

岩政先生から教わった病理学の話に戻ります。

病理学実習は更に厳しく、毎回の実習後に顕微鏡画像をスケッチしたノートを提出して先生のチェックを受けるのですが、私が提出したノートは毎回、スケッチの右下にCやDといった低評価が赤字で記載された状態で返却されました。
AやBの高評価をもらっている友人のスケッチをみると、とても真似できないような美しい細胞や組織の図が描かれていました。
絵の上手下手が評価に反映されているのだろうか、幼少期から絵が下手な私ではダメなのだろうかと思いつつ、下手なら下手なりに、とスケッチの横に詳細な解説文を書き込んで提出してみました。
するとAマイナス(AとBの中間)評価となり、嬉しかったことを記憶しています。

ただ、スケッチの絵のみで文字がないノートを提出し高評価ばかりの同級生もいて、一体どうやって評価しているのだろう、と当時の私たちには謎でした。

それから10年以上後になって、病理専門医資格を私自身がとり、学生時代の自分のスケッチを見直す機会があって、気づきました。
岩政先生はスケッチを「病理組織形態診断が可能か」どうか、すなわち病理診断医の目でご覧になり、評価していたのだろう、と。

当時の第2病理学講座教授室のドアを開けると、正面に岩政先生のデスクがありました。
お忙しい中、三年次の医学生約100名のノート(スケッチ)をそのデスクに置き、ページをめくりながら赤ペン片手に瞬時に評価を書き込んでおられた岩政先生の姿は、想像に難しくありません。
真剣な病理学者であり、医学の厳しさについて教えてくださった、岩政先生です。

以下も、もう20年以上前の話になります。

卒後県外で病理専門医資格を取得した私は、沖縄に戻ってきて先生の所にご挨拶に行きました。
ご挨拶だけのつもりで教授室のドアをノックしたのですが、専門医資格をとって県内の病院に赴任したことを申し上げると、標本をみるか?と言われ、標本をみるのが楽しくてたまらなかった(注)当時の私は喜んで「みます」と答えました。
(注:当時の私は、自分が病理診断を下す、診断目的の標本は重責と共に大変な緊張感を持ってみていました。が、私自身が診断責任を担わない標本は、純粋に顕微鏡を覗き標本の所見を読み取るのを楽しみながらみていました。)

岩政先生は、難しい軟部腫瘍の標本を何枚も持って来られました。
HE標本だけでは診断できないタイプの腫瘍です、と申し上げても許してもらえず、HEで考えられる限りの鑑別疾患を延々と挙げていくと、満足なさったご様子でした。
「軟部腫瘍を(専門に研究を)やらないか?」とお声をかけてくださったのですが、私は軟部腫瘍に興味がなく、即座に辞退しました。
そんな私を遠ざけるでもなく、その日、教室員の方々と一緒の昼食に誘ってくださいました。
昼食の席で英国でビールを飲むのに使うOne pint glassを売っているお店の話をしてくださり、私は後日、その店を探し当てて2個、買いました。
シンプルで持ちやすいデザインの大きなガラスコップは今も家にあり、勝手に岩政先生ゆかりのコップと思っています。

岩政先生は晩年、病理学者としてのお仕事はしておられなかったと聞いております。
個人的にも最後にお目にかかったのがいつだったか、思い出せないほどです。
が、先生によって病理学の才能を見いだされ、病理専門医および病理学者となったお弟子さんたちが各地にいらっしゃり、現代医療の一角を担っておられます。
後進の活躍を、先生は彼岸から見守ってくださっているでしょう。

ご冥福をお祈りします。

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2019年7月14日 (日)

診療情報管理士は、病院の経営とはどういう形で関わるのか?

ある高校生さんにご質問いただいたので、ブログにてお返事させていただきます。

質問

「診療情報管理士は実際、病院の経営とはどういう形で関われるのでしょうか?」

これは、とても良い質問だと思います。診療情報管理士の役割は大きく変化しつつあります。

1.病院の経営とは何か

まず「病院の経営」とは何であるか、を私の言葉で説明させてくださいね。

「経営」とは、営み(事業)を続けること、そのものです。
病院は、患者さんの病気を治療する、医療を提供する事業体です。
たとえば「沖縄県立中部病院」は、沖縄県(沖縄県庁)の「病院事業局」という組織の一つとして経営されています。

事業を継続して行う、すなわち「経営する」という点で、病院は事業体としての性質を持っている、ということをまず理解してくださいね。

そして、事業体の経営には経営資源が必要です。
病院であれば、患者さんに医療を提供し続けるために、経営資源が必要、ということです。

この経営資源は、一般に4つの要素に分けられています。
1)人的資源(ヒト):医療者、看護者、その他の病院で働く人
2)物的資源(モノ):建物、検査機器などの機械、装置
3)財務的資源(カネ):1)2)を事業目的に沿って維持し続けるのに必要なお金
4)情報資源(情報):1)2)3)を事業目的に沿って維持し続けるのに必要な情報

ヒト・モノ・カネ・情報という4要素、おぼえてくださいね。

病院で、この4つの全体をまとめて管理するのは病院長、看護部長、事務部長などの、管理職と言われる人たちです。
管理職の下に医療部門(医師、医療技術者)、看護部門(看護師、看護助手など)、事務部門(事務職員)がいます。

ある病院の事務部長さんは診療情報管理士の資格を持っていますが、この資格を持っていない人が事務部長になることも珍しくはありません。しかし病院事務職員として仕事をしていく上で、診療情報管理士資格取得に必要な医療・経営・情報の知識は役にたつこと間違いないです。

病院の事務部門の中で、ヒトを管理するのは人事部門、モノを管理するのは物流・施設部門、カネを管理するのは財務部門、情報を管理するのが情報部門、という風に組織上は分割されます。分割されているといってもたとえば人事部門はモノやカネには一切関わらない、という厳格な仕事の分け方(業務分掌)ではありません。主にヒトに関係することを扱い、ヒトに伴うモノやカネにも関わる、という程度に理解してください。

2.病院の情報を扱う診療情報管理士

さて。
病院のさまざまな情報は「診療(記)録、カルテ」に集まってきます。
以前は紙のカルテが一般的でしたが、現在は電子化されています。

この電子化されたカルテを読んで内容を理解し、必要な情報をとりだし、その情報を必要としている人に相手が求める形で加工して届けるのが、診療情報管理士の仕事だと私は理解しています。

カルテの内容を理解するには医学の知識が必要です。
情報を扱うにはITに関する技術力が必要です。
相手が何の情報を求めているのか理解し、加工して届けるには医学、情報に加えてコミュニケーション能力が必要です。

実例をあげましょう。※そのままという訳にはいきませんので、一部を仮名にするなど変更しています。

名桜大学の診療情報管理専攻の卒業生であるYさんは、病院で医事課入院係という仕事をしています。
電子カルテをものすごく「読む」仕事だそうです。
どんな風に読むのか、読んで何をしているのか、というYさんの物語です。

登場人物は3人。
Aさん:患者さん。病院に入院し、退院直前です。
F先生:医師。Aさんの主治医です。
Yさん:医事課入院係の診療情報管理士です。病院に勤務して3年目。

Aさんが入院して病院で治療を受け、病気が良くなったので入院5日目での退院が決まりました。
退院前日、4日目の午後のことです。
明日は退院する、と決まったAさんのカルテをYさんが見た時、医師の記録の重要な部分が、何も書かれていないことに気づきました。
「退院時病名」欄が空欄なのです。

入院患者さんの医療費は「退院時病名」で決定されます。
なのに、主治医のF先生は他の重症患者を何名も担当し診療に追われ、病状が改善し退院する患者、Aさんのカルテ入力が後回しになっているのです。
医師F先生としては、重症患者の診療が優先です。
ですけれど、Aさんの退院時病名が決まらないと、Aさんの入院診療費は不明のまま。病院は、入院医療費を請求できません。

Yさんは、Aさんの電子カルテを読みました。
病院に入院するきっかけとなった紹介状、入院してから行った検査リスト、放射線診断医の診断結果、F先生が使用した医療器具、看護師の看護記録などなど、膨大な情報を読み、Yさんなりに理解し考えました。
そしてF先生に退院時病名を提案するメールを送りました。

「Aさんは明日退院予定です。退院時病名は〇〇でよいでしょうか?」

翌日の朝一番で、F先生から「Aさんの病名〇〇を承認します」という返信がYさんに届きました。
病名に従ってAさんの入院医療費が決定され、Aさんは病院の窓口で医療費を支払って退院しました。

これは、ほんの一例です。Yさんの上記の例では「情報」から「カネ」の管理に関わり、「ヒト」である医師の業務効率化に貢献した、ということになります。他にも「モノ」や「情報」に直接的に関わる、重要な役割(病院の各種統計やカルテ開示などなど)を各病院の診療情報管理士は担っています。

電子カルテを読み、必要な人に必要な情報を届ける、診療情報管理士の仕事は、他にも多くの場面で病院の経営に関わっています。

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2018年5月17日 (木)

平成30年度以降の認定試験で何が変わるのか

※※※※この記事の内容は古いので、ご注意ください。※※※※
※※※ 令和元年7月1日発表の、診療情報管理士認定試験の要綱は日本病院会のサイトから入手できます。(2019年7月14日付記)


 

 

なかなか更新しないブログで、すみません。
あくまでも個人が気ままにやっているブログでして、ご期待に添えないことばかりではないかと存じます。

 

と書くと
「そもそも何も期待なんかしてない」
と思われた方もいらっしゃるかと思います。

 

ありがとうございます。

 

そのような方のために、このブログを書いております。
(期待の低さがありがたいです。)

 

さて、もう一度、タイトルとカテゴリをご覧ください。

 

「この内容には興味がない」という方は、以下を読むのはお止めください。
時間の無駄です。
これを読みたい!という方、大変お待たせいたしました。
・・・前置きはここまでです。

 

今年、平成30年度は診療情報管理士認定試験が「変わる」と予告されている年です。

 

毎年2月初旬に行われる、日本病院会をはじめとする四病院団体協議会主催のこの認定試験。
2019年2月の第12回試験から何が変わるのか。
どう変わるのか、ということについて、現時点での私の理解をこちらにて公開しておきます。

 

これまでも細かな改革がされてきている診療情報管理士認定試験ですが、今年度は大改革なのです。

 

「基礎」「専門」「分類」の3つに区分されていた試験が「基礎」「専門」の二つの区分に変わる、と聞いています。

 

具体的には・・・日本病院会のサイト(リンク先はpdfです、ご注意ください)によりますと。

 

>※分類法について
>ICD-10の索引表、内容例示表の2冊を使用しコーディングを行うための学習から、
>主に第12章でICDの体系を理解するカリキュラムに変更になりました。
>基礎課程で学んだ知識を活かし、ICD-10 各章の疾病分類体系の構造や特徴、留意事項を学びます。

 

とのことです。

 

コードを「引く」ところをAIやソフトにまかせ、
「人間にしかできない」ことを
「人間が」する。

 

そのための試験になる、という印象を私は持っています。

 

分類法が「無くなる」訳ではないことにご注意ください。

 

これまでの分類法は「疾病(の病態を理解して)適切なICDコードを付与する」ことができればOK、みたいな感じでした。

 

ICD-11の完成、適用が目前となっている現在、これからは

 

1)現時点でのICDコード(分類)の体系を理解している
2)今後ICDコードがアップデートされる(例:CD-11になる)際に、自分でその変化についていく

 

この2点ができる人を、「診療情報管理士」として世に出していきたいのではないかと、私はみています。
「与えられた業務をこなす」だけではなく、「自ら必要なことを見出して動く」人を資格認定しよう、と。

 

時代の変化についていくのは大変ですが、時代から取り残されるのも人、時代の先を行くのも人、です。
お互い、頑張りましょうね。

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2018年4月16日 (月)

学生さんからの質問に答える

1年以上ご無沙汰してたブログ更新です。


さて、本日は講義を受けた学生さんから頂戴した質問の回答をこちらで行います。

「医療概論及び臨床医学総論」という講義で、書いてもらって持ち帰った質問、順序はランダムです。

Q1:先生が考える人間とは何ですか?

 えーと。
 一言で答えられないような本質的な質問をありがとう。
 いやぁホントに、人間って、何でしょうね。
 生まれて、成長して、喜怒哀楽をいっぱい味わって、他人と関わって、そして死んでいく存在、かな。
 とりあえず、こんなところで次の質問に答えさせてください。

Q2:先生は医者ですか?

 はい、医者です。病理専門医、という専門医でもあります。

 で、医者ですけど、自分では普通の人間だと思ってます。
 すべての人が特別な存在であるのと同じく、私も特別な存在だとは思いますが
 その肩書として「医者」ってのがくっついてる、ごく普通の人間です。

Q3:人間には、他の動物にはない欲がたくさんあります。
 何故、人間だけこんなにも欲をもっているのだと思いますか。

 うーん、他の動物と同じような欲もありますし、違う欲もあると思いますが、
 数え方次第で、実は欲の量的には同じくらいかもしれませんよー。
 文明と文化で欲を細分化してカウントするから「たくさん」って思えるだけじゃないですかね。

Q4:どうして常に明るく振舞おうとしているのですか?
 もともとの性格ですか?それとも職業柄ですか?

 これも答えにくい質問ですが。
 小学校の時から、通知表のコメント欄に「明るく活発で」と書かれるような性格ではあります。
 でも性格の根っことしては、明るいかどうかは自分では疑問です。
 明るく振舞う方が、自分も、周囲も、楽しいんじゃないかなと思ってる面はあります。

 職業柄というのが、大学教員という職を楽しんでる、という意味なら、その通りです。

Q5:なぜ診療情報管理士はチーム医療の一員として働けている人が少ないのか

 ストレートな質問ですね。これは歴史的経緯と、現場の事情によります。
 新しい専門職なので、地位が確立されていない、という説明はできます。
 細かく見ていくと「環境が悪い」すなわち医療サイドに問題がある場合と、
 診療情報管理士自身が「チームに入ることを求めていない」場合があるように私には思えます。
 あくまでも私見です。

Q6:AIにこの仕事がとられてしまう可能性はありますか。

 どんな仕事もとられてしまう「可能性」はあります。
 でも、医療の情報を集約し分析して価値を生み出す、という診療情報管理の本質的な部分について、
 AIの先を行けるのは、人間だと思います。

Q7:何で人間だけ感情があるのか

 人間だけじゃない、犬や猫にも感情がある、という話はここでは横に置いときます。
 感情と知性、両方があるっていうのは人間の素晴らしい特徴だと私は思ってますよー。
 知性や理性だけじゃ人生絶対つまんないんです。
 感情だけでもつまんないんですけど。
 両方そろって、豊かな人生があるんじゃないかと思います。

 「何で」という質問には答えてませんけれど、お許しくださいね。

Q8:医療事務とはどういうところが違いますか。

 「医療事務」と「診療情報管理」の違いですね。
 広義の「医療事務」に診療情報管理を入れることもあります。
 医療事務職員から進化した専門家が「診療情報管理士」だと私は理解してます。
 このあたり人によって意見が違うかもしれませんけれど。

Q9:学び、考え、活かす力はなぜ人間だけが持てたのだろうか。

 学び、考え、活かす力が、人間の文化だからだと思います。
 人間社会で是認され、人間の社会を発展させてきたのがこれらの力だから、かと。

Q10:医療は「芸術」と「科学」の「芸術」とは具体的になんですか。

 医療はArt & Scienceだ、という講義での説明をもっと突っ込んで聞いてくれてありがとう。
 この場合のArtは「ヒトのわざ、人間が行う、人が創造する」というくらいの意味だと思ってください。
 Scienceは神(日本的世界感では「自然」と言い換えても良いかもしれませんね)が備えたものを
 調べて、人間が応用する(創造するのではない)領域なので、それとは異なる区分、ということです。

Q11:臨床医学と予防医学、応用医学の中で一番難しい、難解な学問はどれだと思いますか。

 うーん、どれもそれぞれに難しさがあるので、比較することそのものが難しいですね。
 私は臨床医学から基礎医学に片足を突っ込んだ人間だと思ってますが、基礎医学の難しさも
 半端じゃないんで、私の人生は基礎医学の沼に沈んで終わりそうなんですよ。沼が深い。
 で、上に書かれた3つの中で、私が一番、理解していないのは応用医学だと思います。

Q12:この文(注:診療情報管理士テキスト前文「病気と病気の人を理解するために(木村明)」)を読んで、
 人間は「不老不死」を願うが私たちは生命の大きな流れを止めることはできない。とありますが、
 iPS細胞など様々な科学が発達したら、「不老不死」は実現できるのではないでしょうか?

 おお。これは二つの立場がある、とも言えます。

  立場A 「不老不死は実現できる」(ので不老不死を目指して努力し続けよう!?)

  立場B 「不老不死は実現できない」(けれど…)

 私自身の立場はBです。
 実現できない、実現をめざす必要もない、という立場、考えです。
 なぜそう考えるのか、「けれど」の先には何が続くのか、というのは長い話になります。
 ですので、また機会がありましたら。

以上です。長文お読みくださってありがとうございました!

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2017年3月 5日 (日)

平成28年度第1回院内がん登録研修会参加記録

2017年3月4日、琉大で開催された、院内がん登録研修会に参加しました。

膨大な情報量を詳細に説明された研修会でした。
PCでメモをとったのですが、非常に長いです。
とても頭に入りそうにないので、備忘録代わりに、こちらに掲載します。

注:あくまでも個人による研修会参加記録です。
 私は病理専門医ですが、がん登録実務者ではありません。
 実務についての理解は乏しいことをあらかじめご承知おきください。
 記載内容に誤り等が含まれている可能性を否定できませんが、その責は私にあります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
講師:江森 佳子先生(国立がん研究センター)

2016年版 院内がん登録 標準登録様式

2016年対象症例からの登録ルールについて説明する。
(前版は2006年様式)

様式が変わってもすべては変わらない。
基本的なベースは2015年までと同様だが、
それまでにはとれなかった情報をとれるように
項目が増えたり、視点が変わったりしている。

99項目ある。すべての項目に何かを入れる。
「オプション項目(入れても入れなくてもいい)」はなくなった。
基本すべてに入れる。空欄は作らない、というコンセプト。

○全国がん登録共通項目 26項目
がん登録関連法規にて定めらている項目。

●院内がん登録の標準項目 47項目
他の施設と比較できるのが院内がん登録の最大のメリット。

◎管理項目 26項目(←もともとはフリー項目だった)
施設で必要と考えられる項目
(すべて手入力の必要はなく、他院内システムからのインポートも可)

【様式の適用時期】
新標準登録様式の対象症例は平成28年(2016年)1月1日以降
対象症例から適用。
 他施設診断:当該腫瘍初診日が2016年1月1日以降
 自施設診断:自施設診断日が 2016年1月1日以降

そもそも対象症例とは何か。
何年何月何日の症例?どの日付をキーとするのか?

キーとなる日付を「起算日」という。
起算日とは?
 自施設診断症例は自施設診断日。
 他施設診断症例は、当該腫瘍初診日。

院内がん登録については当該腫瘍で初診されてから4~5か月後に登録。

【登録対象】
ICD-O-3における性状コード2もしくは3
(性状コ―ド2が上皮内癌、3は悪性原発)

新様式での登録対象拡大

●一部の卵巣境界悪性腫瘍(性状コード1)
ICD-10においては「卵巣腫瘍のICD-0-3の844~847は悪性扱い」
●中枢神経系腫瘍は良性、良悪性不詳も登録。
脊髄膜、脊髄、馬尾についても含まれる。
●GISTはすべて登録対象。

【登録対象から除外するもの】
●顕微鏡学的診断のない「上皮内癌」
 (肉眼診断や画像診断のみで病理組織診、細胞診がないもの)
●前立腺PIN3は登録対象外
●セカンドオピニオンの症例も登録対象外

【臨床的悪性】の扱いについての変更
●病理レポートで悪性と書かれていれば/3
●病理所見で悪性と明示されていなければ/1
●病理学的な所見がなくても、遠隔転移があれば/3

【がん登録でいう「がんの診断」とは】
●医師が「がん」と認識すること。
  確定診断とは限らない。極めてあいまいなことが多い。
  「がんの疑い」と書かれていることも多い。
  他施設の情報で「がんの疑い」→がんの診断とはしない
  自施設で「がんの疑い」→医師に確認の上、がんの診断としてよい

(以下余談。
 休憩時間に、一緒に参加していた学生から質問された。
 「あいまい、というのはどういうことか?」という質問だった。
 私からの回答として、臨床医には「確定診断」という用語を、
 病理組織検査がなされていない場合に使いたがらないことが
 ある、という話をした。以下のようなフィクション。

 75歳男性。入院時主訴、腹水貯留。
 アルコール飲酒歴あり、画像診断では肝硬変+肝細胞癌。
 血中AFP高値。肝腫瘤を穿刺し、穿刺吸引細胞診を提出した後、
 同穿刺針よりエタノール注入。
 しかし細胞診による診断が確定される前に患者さんが亡くなった。
 剖検をご遺族に提案したが承諾が得られず。
 退院時要約には「肝細胞癌の疑い」と記載されていた。

 電話で主治医に「この方は肝細胞癌と確定診断されてますか?」
 と尋ねたら「病理に聞け」という一言で終わったとする。
 で、病理細胞診は「壊死細胞のみ、診断不能」という結果。

 さてこの患者は確定診断されてない、ということになる。
 「がん登録」の対象となるのか?対象外か?
 あなたはどう考える?

 わたしは「がん登録」の対象だと考える。
 入院時主訴の腹水貯留は肝硬変によるものかもしれない。
 しかし、AFP高値、肝細胞癌疑いとして治療のエタ注をされている。
 主治医は肝細胞癌と認識していたとしか思えない。
 こういう症例を登録対象外にしてはならない。)

【一般的な「がん治療」とは】
1)原発巣、転移巣のがん組織に対して「縮小あるいは消失」を目的
  として行われる治療
2)症状緩和・軽減のための治療
 例:吻合術(バイパス手術)などの外科手術、
   疼痛緩和のための薬物・放射線療法。

がん登録の対象となる、がん治療の「初回治療」としては上の1)のみ。

【造血器腫瘍以外の悪性新生物の初回治療の考え方】
1)診療録にがん治療計画が記載されている場合は、その治療計画の完了まで。
2)がん治療計画が記載されていない場合、施設での標準的ながん治療計画が
 あれば、その治療計画の完了まで。
3)上記1)2)以外で、初回治療に含めないものが2点。
 Ⅰ:「がんの進展」または「期待した治療効果がない」と判断された時点
   「治療効果がないため別治療を開始した、その時点までの」治療
 Ⅱ:効果の有無等の記載がなく、検討している治療が診断(起算日)から
   4か月以上経過して開始された治療は、初回治療に含めない。
 (注意:何か別の理由があって計画通りに進んでいる場合は「4か月」に
    こだわらないこと。)
4)患者による治療拒否あるいは、医師(と患者の合意により?)経過観察が
  選択されている場合は、「経過観察という治療」を行ったと考える。

  例)症状緩和のみの治療 → 経過観察に含まれる。

【造血器腫瘍】変化なし(初回寛解導入までの治療)

初回治療での経過観察
造血器腫瘍以外では、「経過観察」を行うのは初回開始施設だけ。
造血器腫瘍のみは例外的に初回経過観察を複数施設で行うことがあり得る。

【標準登録項目とその定義】
基本情報
腫瘍情報
初回治療情報
生存状況情報
管理項目・その他

【日付の書式、フォーマット】
一般的なDBで用いられる数値型を用いる。
年月日を区別するためYYYYMMDDとする。月日が一桁の数なら0を付して2桁。
年月日が不詳の場合はYYYY=9999 MM=99 DD=99
~年頃、~月頃しかわからないときはYYYY8888,YYYYMM88
該当せず、適用なしの場合は77777777

【基本情報】
900 病院等の名称
100 診療録番号(患者ID)
110 重複番号(多重がんの把握のためのコード)
120 カナ氏名
130 氏名
140 性別
150 生年月日
199 基本情報(テキスト)

【110 重複番号】
多重がんのルールは変更されている。(あとで)

【120 カナ氏名】
氏名の読み、全角カタカナで。姓名の間に全角スペース。

姓が変更になった場合は、新姓に修正する。
旧姓は基本情報(テキスト)に記載。

【130 氏名】従来通り。

【140 性別】
生物学的性別ではなく、住民登録されている性別を入力する。

●生物学的性別が異なる場合は基本情報テキストに記載すること。
●住民登録上の性別が変更された場合は可能な限り変更し、
 以前の性別を基本情報テキストに記載する。
●住民登録している性別が明確でないときは診療録等で使用されている
 性別を入力する。

【190 基本情報テキスト】基本情報についての補足的情報。

【腫瘍情報】その1
220 診断時郵便番号
200 診断時都道府県コード
210 診断時住所
300 原発部位(局在コード)
309 原発部位(テキスト)
310 側性
320 病理診断(形態コード)
329 病理診断(テキスト)
330 診断根拠

【210 診断時住所】
市町村を省略しない。
転居があっても変更しない。
転居先は【950 最新住所】で保持する。

【300 原発部位(局在コード)】
ICD-0-3の局在コード。4桁。

【309 原発部位テキスト】
システムによって自動表示される言葉をそのままにしない。
その症例の診療記録に記載されている詳細な情報を要約して用いる。

【310 側性】
臓器における原発巣の側性
側性のある臓器における多重がんの判定に用いる。
コードの選択。
1:右側
2:左側
3:両側「網膜芽細胞腫、Wilms腫瘍、両側同一組織型卵巣腫瘍」のみ。
4:側性なし
9:不明(上記3「両側」以外のすべての腫瘍の両側性のもの)

【320 病理診断(形態コード)】

【329 病理診断(テキスト)】
309と同じく、病理診断の組織型の情報を補完する詳細情報。

希少がんの患者さんへの情報提供に用いられるため、正確に
記載すること。

【330 診断根拠】
患者全経過を通じて、最も確かな診断根拠。
コードの選択
1:原発巣の組織診
2:転移巣の組織診
3:細胞診
4:部位特異的腫瘍マーカー(AFP肝癌、hCG絨毛性腫瘍、
 VMA神経芽細胞腫、免疫グロブリンワルデンストレームMG血症)
5:臨床検査(4以外の腫瘍マーカーも含む)
6:臨床診断
9:不明

【腫瘍情報】その2
350 当該腫瘍初診日
360 他施設診断日
370 自施設診断日
380 診断日
400 診断施設
410 治療施設
420 症例区分
450 来院経路
460 発見経緯
470 病名の告知の有無

【350 当該腫瘍初診日】
初めて患者が自施設を受信した日

【360 他施設診断日】
より確からしい診断根拠の検査を行った日

【370 自施設診断日】
より確からしい診断根拠の検査を行った日

【診断日についての変更点】
2016年症例より、がん検診、健康診断、人間ドックで
行われた検査についての「診断日決定」の検査に含めて考える。

医療機関にかかったところをスタートとするので、
がん検診・健康診断・人間ドックで「がん」と診断し、
その後、自施設で診療していない症例は「登録対象外」とする。

360と370、どちらか一方が77777777となる。

【380 診断日】
全国がん登録の「診断日」に該当する日。

400(診断施設)によって以下を選択する
 →1(自施設診断)ならば370自施設診断日を。
 →2(他施設診断)ならば350当該腫瘍初診日を。

診断日は非常に重要。生存率などの起算日となる。
 他施設診断の場合、他施設診断日が起算日にふさわしいが
 より「確実である」当該腫瘍初診日を代用する。

【400 診断施設】
1:自施設
2:他施設

【410 治療施設】新項目!
当該腫瘍の初回治療をどの施設で開始・実施したかを判断する。
いわゆるセカンドオピニオンは登録対象外。

1:自施設で初回治療せず、他施設に紹介または転帰不明
2:自施設で初回治療を開始(経過観察開始を含む)
3:他施設で初回治療を開始後に、自施設を受診して初回治療を継続 ←NEW!!
4:他施設で初回治療を終了後に自施設に受診
8:その他(剖検など)

治療施設の考え方:初回治療が経過観察の場合、造血器腫瘍以外であれば継続はない。

【420 症例区分】新項目!
当該腫瘍の診断および初回治療をどの施設で開始し、実施したかを判断する。

10:診断のみ。

20:自施設診断・自施設初回治療開始
21:自施設診断・自施設初回治療継続
30:他施設診断・自施設初回治療開始
31:他施設診断・自施設初回治療継続

40:初回治療終了後
80:その他

20~31が「自施設責任症例」となる。

診断施設についての症例区分は考えて選択する。

【450 来院経路】自施設を受診した経路

「他施設」とは医療機関のみならず、検診機関や老人保健施設も含まれる。

10:自主的受診
20:他施設からの紹介
30:自施設で他疾患経過観察中(自施設検診部門からの紹介がここに含まれる)
80:その他
99:不明

紹介状がある場合の扱い。
 紹介状の宛名があるならば「20」
 紹介状がなくても、宛名(施設名、医師名等)がなければ「10」

【460 発見経緯】
当該腫瘍の診断について、発端となった状況。
(一番最初に医療機関を受診したきっかけは何か。)

1:がん検診・健康診断・人間ドック
3:他疾患の経過観察中の偶然発見
4:剖検発見(Ai含む)
8:その他
9:不明

【470 病名の告知の有無】
初回治療方針が決定されたの告示状況
病名が(悪性、がん、等の言葉が用いられて)本人に告知されているか否か。

1:病名の告知あり
2:病名の告知なし
9:不明

【腫瘍情報 その3】

UICC TNM分類 第7版に準拠

T分類のTxは自施設にて情報不十分で不明の場合。
他施設での診断情報が不十分な場合は1999

1000:T0
1010:Tis
1050:Ta
1100:T1
1200:T2
1300:T3
1400:T4
1500:Tx
1999:不明
7777:該当せず

UICCの第8版は日本語版がGW過ぎに出版予定。
がん登録での採用は早くても2018年。

【540 TNM分類 付加因子】

骨軟部虫垂:G因子
精巣:S因子
悪性リンパ腫:症状の有無
甲状腺:乳頭/濾胞 45歳未満
共通

治療前の腫瘍の状態。
該当する分類がない場合は7777

以下の3つのコードは骨軟部精巣悪性リンパ腫甲状腺のみ。
決定できない場合は5999
手術なし6610
術前治療後6620

pTNMは他施設の場合はかつては入力不要だった。
新様式では「初回治療があちこちで継続される」ため
治療しているのであればpTNMを把握しているべきだろう。

他施設のpTNMを入れる時は8000番台。
自施設のpTNMなら1000~5000番台。

初回治療終了後に自施設来院の場合は8000番台をつけない。

【550 肝癌の病期】
肝癌についてはUICC+原発性肝癌取り扱い規約
規約の情報をとるならここ。

【580 進展度・治療前】
初回治療前のがんの拡がりをみる。


【初回治療情報 700~】

観血的治療:700~730
非観血的治療:740~766

【初回治療情報 その他の治療】

【706 外科的治療(他施設)】

【710 鏡視下治療の有無】
一つの手術の中で併用されている場合は侵襲性の高い方を。

【711 鏡視下治療の施行日】

【715 鏡視下治療(他施設)】

【730 外科的・鏡視下・内視鏡的治療の範囲】
700、710、720で示された観血的治療の範囲
(該当しない場合は6観血的治療なし)
1:原発巣切除(腫瘍遺残なし)
4:姑息的な観血的治療(腫瘍遺残あり)
6:観血的治療なし
9:不明

【740 放射線療法の有無】
自施設で施行された初回治療のみ。

【750 化学療法の有無】
自施設で実施された初回治療のうち化学療法の実施の有無。
分子標的治療薬も化学療法に含める。

TAEのみならば【その他 770】になる。

【770 その他の治療の有無】

TAEやPEITなどはこちら。
免疫療法はこちら(BCG膀胱内注入等)
免疫セットポイント阻害剤は化学療法として750へ。

他施設ならば【775 その他の治療】

【780 経過観察の選択の有無(自施設)】

自施設で初回治療が開始された際の経過観察の選択の有無。

700~770の自施設での初回治療がすべて「施行なし」
「治療施設 2 自施設初回治療開始」

経過観察の選択の有無(自施設)の意義
・初回治療開始であれば、初回治療情報の項目が
 いずれかは「あり」または「経過観察を開始」しているはず。
・初回治療継続でも同様だが、この場合は初回治療情報の
 項目がいずれかは「あり」
 (初回治療継続時には「経過観察」は存在しない)
  ただし造血器腫瘍の際は別。

【790 症状緩和的な治療(自施設)】

自施設で実施された初回治療のタイミングで行われた、症状の
緩和を目的に行われた治療の実施の有無

初回治療に準じるタイミング(診断日からおおむね4か月以内)
で症状緩和的な治療が自施設で実施されたか否かを選択する。

(例:pain control、通過障害の解除を目的としたステント挿入、等)

考え方として、診断だけして他施設に紹介する(初回治療は他施設)
だが、たとえば黄疸症状を伴う胆道系腫瘍患者の場合、減黄術を
行って次の施設に送った場合には、「症状緩和的治療を行った」
ことを、がん登録に残すことになる。


【生存状況情報】

生存確認調査を行った後に記入する項目。

【800 生存最終確認日】

死亡が明らかな患者は死亡日を入れる。生存最終確認日には7を8個。

【830 生存確認調査方法】

10 来院情報  ←規定値。

850 死因情報(全国がん登録):ここはICD-10のコードを入れる。
 自施設の情報は入れない。

【管理情報】

999:全般情報(テキスト)
情報を複数入れる時にはセミコロン(;)を区切り記号とする。
個別説明は「=」を付して行う。
(例:分子標的薬=リツキサン)
フリーテキスト。全角換算おおむね128文字まで。
基本情報(テキスト)と合わせて256文字以内が望ましい。


その他の登録ルールの変更

子宮頸癌の円錐切除術は2016年症例から「検査」扱い。
膀胱癌TUR-Btは内視鏡的治療として扱うことは変わらない。
 結果がTaだった場合はpTaでよいが、結果がTa以外で、
 それ以上の追加切除がない場合はpTXとする。
 観血的治療の範囲として「姑息的観血的治療」とする。
前立腺癌TUR-Pは2015年までは「内視鏡的治療」扱い。
しかし2016年症例からは「検査」扱い。TUR-P情報はcT
前立腺癌治療としてのHoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)
は2015年までは「レーザー等治療」扱い、2016年からは
「内視鏡的治療」扱い。

===多重がんルールの概要===

多重がんの定義。

「単発がん」とは一つの腫瘍として登録する。
別々の腫瘍として登録するものが「多重がん」。
「多発がん」の多くは「単発がん」。

SEER2007準拠。
固形腫瘍のものを今回配布。
 造血系腫瘍のものはルールが複雑すぎるため
 どこまで導入するかを現時点では検討中。

全体の分類(どのルールを適用するか)
・頭頚部
・結腸 ←C18のみ。直腸は入らない。
・肺
・皮膚悪性黒色腫
・乳房
・腎(実質)
・尿路系(腎盂、尿管、膀胱、尿道)
・良性脳腫瘍、悪性脳腫瘍
・上記以外の部位・組織型

基本ルール

多重か否かを判定し、その上で組織型ルールを適用する。

多重がんルール(Mルール) Multiple Primary
組織型ルール(Hルール) Histology

原発病巣に対して、ルールを用いる。
順番に適用して、該当ルールを用いる。


まず部位を決め、それからルールを見に行く。
まずMのM1から見て、M1に当てはまるかどうか、
当てはまった時点でストップ。

上下の関係が重要。順番に見ていき、全体を見渡さない。
例)M5とM8にも該当する場合は、M5を適用する。

「その他」のルールを見ていく。(p136)
*胃にできている腫瘍が「管状腺癌」「MALTリンパ腫」の場合は
 胃の管状腺癌を優先する。
*時期が違う場合には「今の」腫瘍について。

組織型の決定(Hルールを適用する際)には1)2)3)の順で優先する。
1)病理細胞診所見を引用している診療録記載
2)診療録に引用されている組織型の記載
3)CT,PET,MRI所見での組織型記載 ←この部分は部位ごとに異なる。

表1は側性がある場合。
表2は組織型について。

【M1】→ 単発。※転移病巣という記述なし。
 ●単一腫瘍か複数腫瘍かが不明
【M2】→ 単発
 ●単一腫瘍
【M3】→ 単発
 ●複数腫瘍、前立腺、腺癌
注1:前立腺の腺癌は繰り返し診断されても1登録とする。
注2:腺癌NOSと腺房腺癌は、同じ組織型として扱う。
【M4】→ 単発
 ●複数腫瘍、網膜芽細胞腫
【M5】→ 単発
 ●複数腫瘍、カポジ肉腫
【M6】→ 単発
 ●複数腫瘍、60日以内、甲状腺、濾胞癌と乳頭癌
【M7】→ 単発
 ●複数腫瘍、60日以内、両側卵巣、上皮性腫瘍(8000-8799)
【M8】→ 多重
 ●複数腫瘍、側性のある部位の両側(表1)
【M9】→ 単発
 ●複数腫瘍、腺腫性ポリポーシス
【M10】→ 多重
 ●複数腫瘍、1年を越える間隔をおいて診断
【M11】→ 多重
 ●複数腫瘍、局在コードの上位3桁が一致しない
【M12】→ 多重
 ●複数腫瘍、局在コードの4桁目が異なる
【M13】→ 単発
 ●複数腫瘍、ポリープ内腫瘍と壁発生、ポリープ内でない上皮内あるいは浸潤性腺癌
【M14】→ 単発
 ●複数腫瘍、複数のポリープ内腫瘍
【M15】→ 多重
 ●複数腫瘍、上皮内癌を診断後、60日を越える間隔をおいて浸潤癌を診断
【M16】→ 多発
 ●複数腫瘍、8000/3と他の特異的な組織型
【M17】→ 多重
 ●複数腫瘍、形態コードの上位3桁が一致していない
【M18】→ 単発
 M2~M17の条件に合致しない場合。(例:上皮内癌診断後、60日以内の浸潤癌)

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